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コロナ禍で初産婦の不安増加 情報入手困難に 岡大グループ調査

 新型コロナウイルス禍で出産・育児に関する情報が得にくくなり、不安を感じている初産婦が増加している―との調査結果を、岡山大の研究グループがまとめた。医療機関による母親学級の中止などが影響しているとみられる。研究を主導した同大大学院保健学研究科の中塚幹也教授(生殖医療)は「出産・育児に悪影響を及ぼす恐れがあり、困難を感じている人への支援が必要だ」としている。

 調査は6~8月、岡山、福山市の2医療機関の協力で実施した。妊婦433人に、コロナの影響に関する38項目を質問。17~45歳の400人(初産婦211人、経産婦189人)から有効回答を得た。

 初産婦に「不安に感じること」(複数回答)をコロナ拡大前と拡大後で尋ねたところ、拡大後は52・6%が「妊娠、出産、子育ての情報取得」を選び、拡大前の33・6%から1・5倍に増加。「育児技術の習得」は拡大後は59・7%が不安に感じ、拡大前の32・2%から1・8倍に上昇した。

 「3密(密閉、密集、密接)を避けるため、育児について学ぶ『母親学級』が中止になっているほか、情報交換する『ママ友』をつくる機会が減っていることが要因ではないか」と中塚教授は指摘する。

 「コロナの感染拡大で新たに不安に感じていること」(複数回答)を経産婦と初産婦に質問。両方合わせ、「自身が感染して胎児に影響がないか」75・3%▽「自身の感染」65・0%▽「立ち会い出産ができるか」60・8%―などと続いた。

 経済的な不安については、感染拡大後は「ある」「ややある」とした妊婦は合わせて50・8%となり、拡大前から13・5ポイントも増えた。拡大後に経済的な不安が生じた妊婦を対象に、うつなどの精神状態を調べた結果、5・3%が特に重い「重度」、19・7%が次に重い「中等度」となった。

 中塚教授は「コロナ禍で妊婦の負担が増大している現状が浮き彫りになった。支援もなく精神状態が悪化してしまうと、『妊娠さえしなかったら』との思考に陥り、ネグレクト(育児放棄)や虐待につながりかねない」と警鐘を鳴らしている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年11月12日 更新)

タグ: 女性お産岡山大学病院

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