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第57回 岡山大病院④ 産科婦人科 子宮頸がん治療に注力 分娩は「オープンベッド」

子宮頸がん手術を行う平松教授(中央)ら

平松祐司教授

 岡山大病院は、明治時代初期の岡山藩医学館大病院から現在に至るまで、最先端の医療を提供し続けている。今回は子どもたちや女性らの疾患に立ち向かう「産科婦人科」「小児科」に、「眼科」を取り上げる。


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 前身時代を含めた同病院で120年超の歴史を誇る婦人科領域では、子宮の入り口付近( 頸 ( けい ) 部)にできる子宮頸がん治療に力を注ぐ。

 子宮頸がんは長期間のウイルス感染によって引き起こされ、子宮がんの大半を占める。早期に発見できれば治癒率は高いものの、進行してしまうと子宮を温存することが難しくなってしまう怖い病気だ。

 近年、発症の低年齢化が進み、妊娠・出産を経験していない女性に増加。3人の婦人科がん専門医が、妊娠する能力や排尿機能を残す各種の機能温存手術を実施しており、2008年は103症例を手掛けた。

 子宮奥にある袋状の部屋(体部)は、妊娠時に胎児の成長に合わせて大きくなるように筋層で覆われているが、この部位にできる良性のこぶが「子宮筋腫」。35歳以上の女性の4人に1人はかかっているとされる。

 妊娠中にかかると流産や早産の要因となり、血栓症などの合併症を引き起こしてしまうこともあるという。平松祐司教授は「出産後に切除する医療機関がほとんどだが、われわれは患者さんの症状を勘案し、早産などのリスクを減らすため、適応があれば妊娠中にも切除している」と説明する。

 周産期医療では03年から、全国に先駆けて国のモデル事業「周産期オープンシステム」に取り組んできた。

 妊婦健診は地域の開業医院などで受け、 分娩 ( ぶんべん ) はオープン(開放)ベッドを用意する岡山大病院で行う仕組み。合併症などがあり、高いリスクを抱える妊婦が安心して分娩ができるようにし、これまでに114人の妊婦を受け入れてきた。

 「産科医院の減少や医師不足にも資する取り組み。大学での人材育成にも役立っている」と平松教授は説明する。

 習慣流産・不育症では年間60~100人の新たな患者を受け入れているほか、不妊症患者への体外受精なども行い、妊娠・出産を切望する女性を後押しする。性同一性障害には精神科神経科や形成外科、泌尿器科と連携し、08年には127人の患者を受け入れた。

 平松教授は「教科書に書いてある常識にとらわれず、患者さんのQOL(生活の質)がより向上するような治療への挑戦を続けている。今後も高い技術に裏付けられた確かな医療を提供していきたい」とする。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年06月22日 更新)

タグ: 女性お産岡山大学病院

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