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第57回 岡山大病院④ 小児科 心臓カテーテルで実績 3泊程度の入院で帰宅

心房中隔欠損症のカテーテル治療に取り組む小児科の専門医ら

森島恒雄教授

 岡山大病院小児科が誇る診療分野の一つが、心房中隔欠損症などに対する「心臓カテーテル治療」だ。2008年度の処置数は168件で、国内の医療機関で1、2位の実績を持つ。

 内訳は、心房中隔欠損閉鎖術90件▽大動脈 縮窄 ( しゅくさく ) へのバルーン拡大術30件▽ステント留置術10件―など。主に大月審一准教授ら6人の医師が処置に当たる。

 最多症例の心臓内部の壁に穴が空く先天性の「心房中隔欠損症」は、全国の医療機関から患者が紹介されてくる。閉鎖術は太ももの付け根からカテーテルを挿入して心臓に送り、先端の閉鎖栓で壁の両側からふさぐ。「開胸する外科手術よりも切開部分が少ない低侵襲で患者さんの負担も少ない。3泊程度の入院で帰宅できるのが利点」と森島恒雄教授は説明する。

 得意分野とする心臓などの循環器領域の専門外来に訪れる患者は年間3千人におよび、入院患者数は同400人。心エコー検査やカテーテル検査などを手掛けており、心臓血管外科などとの橋渡し役としても重要な役割を果たす。

 このほか、年間20人の小児が入院してくる白血病など血液疾患の治療にも精力的に取り組んでいる。骨髄移植などに代表される造血幹細胞移植や出産時に得られるさい帯血移植に、化学療法などを組み合わせた治療を、茶山公祐講師ら6人が担当している。

 一方で、深刻化する地方の医師不足や医療の地域格差の是正対策として期待される遠隔医療でも実績を挙げている。大月准教授らが中心となって取り組んでいる「新生児の心エコー診断ネットワーク」がそれだ。

 光ファイバーで結ぶ岡山、広島、愛媛、高知県など中国四国地方の13の基幹病院・医院から送られてくる新生児の心臓の超音波画像を、岡山大病院の医師がリアルタイムで診断し、治療方法などを助言。これまでに約150件の診断を行ってきた。

 森島教授は「循環器や血液、新生児に感染症など多くの専門医がそろっているのがわれわれの強み。今後も地域医療の発展に向け、優秀な人材の育成に努めたい」と意気込んでいる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年06月22日 更新)

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