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(4)外傷・骨折の治療ゴールとは 岡山赤十字病院整形外科医長 金丸明博

岡山赤十字病院のリハビリテーションセンター

金丸明博整形外科医長

 リハビリテーションという言葉を耳にしたことがあると思います。リハビリやリハなどと略して言われることもあります。「rehabilitation」と書きますが、その語源はラテン語に由来し、re(再び)+habilitate(ラテン語の“habilis”に由来し、適したという意味)となります。つまりリハビリテーションとは、「再び適合させる」という意味です。

 骨折などの治療を行うとき、よく患者さまやご家族から、「けがする前のように動かせるようになりますか?」と聞かれます。私たち医師は「分かりません」としかお答えできません。これは、いかに素晴らしい手術を行おうとも、手術だけでは機能は取り戻せないからです。

 手術は適切なリハビリテーションを行うための準備のようなものです。機能を取り戻し、日常生活や仕事に「再び適合する」ためには、リハビリテーションが不可欠です。完全に元通りになることは困難ですが、少しでも元の状態に近づけるためにリハビリテーションがあるのです。

 しかしながら、われわれ整形外科医や理学療法士、作業療法士などのスタッフが頑張るだけではうまくいきません。リハビリテーションは、患者さま自身が中心となり主体的に行わなければ決して結果が出ません。ただ、骨折したばかりの頃や手術後には、痛みや不安のために本当に動かしていいのか、どう動かしていいのか分からないのも当然です。患者さまを中心として医師や理学療法士・作業療法士、その他スタッフがチームとなり、説明・指導を行っていきます。そして、その時々の状態に応じてメニューを調整したり、疑問を解決していくことが重要になっていきます。

 患者さまを適切なリハビリテーションにつなげ、機能を回復し少しでも元の状態に近づけることこそが、本当の外傷・骨折の治療ゴールとなるのです。

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 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 かなまる・あきひろ 岡山大学医学部卒業。高知医療センター、津山中央病院を経て2018年より岡山赤十字病院勤務。日本整形外科学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年11月17日 更新)

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