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岡山、広島、香川 脅威高まる鳥インフル 対策に関係者ぴりぴり 養鶏業者:感染経路遮断に全力  行政:汚染調査や防疫演習

鶏に異常がないかどうか確かめる養鶏会社従業員。業者は感染防止対策に必死だ=岡山県内

 アジア、欧州に波及し、脅威が高まっている鳥インフルエンザ。今年六月には茨城、埼玉県の養鶏場で感染が確認されたが、鶏の大量死だけでなく、新型インフルエンザに“進化”し、人間社会に大流行する恐れがある。ウイルスが活発化する冬場を迎え、岡山、広島、香川県内でも行政や養鶏業者らが対策に神経をとがらせている。

 「こちらも必死。生きるか死ぬかだから…」

 鳥インフルエンザに関する分厚い資料を前に、岡山県南西部の養鶏会社社長は力を込める。「日本では鶏に直接ワクチンを接種することが禁止されており、感染源、経路のシャットアウトに全力を傾けるほかない」

 ウイルスは渡り鳥などにより持ち込まれるとの説が有力。同社は鶏舎窓に防鳥ネットを設け、鶏の飲み水、空コンテナ、農場の消毒など衛生管理対策をさまざまに講じている。従業員以外の鶏舎立ち入り禁止し、他農場に出入りした従業員の帽子、服、靴の水洗、事務所や農場敷地に入る車の簡易洗車まで徹底した。

 「従業員には申し訳ないが、愛玩用に鳥を飼うことまで禁止した」と同社社長。「相手は目に見えないウイルス。万全を期したつもりでも100%とはいえない」と不安をのぞかせた。


報告義務付け

 鳥インフルエンザは二〇〇三年秋から中国や東南アジアで流行。鶏の大量死が相次ぎ、日本でも大分、山口県などで感染が確認された。昨年末以降、ベトナムを中心に人への感染が確認され、タイやインドネシア、カンボジアを含め、六十人以上が死亡している。

 茨城県では今年六月に弱毒性の鳥インフルエンザウイルスが検出され、国は各都道府県にウイルス汚染の調査を指示。岡山県では八月、千羽以上を保有する百三十五養鶏農場のうち、四十二農場で鶏のウイルス抗体検査を行った。この検査で陽性反応はなかったが、残る農場についても順次、調査を行う方針。十一月からは毎日、各農場で死鶏数をチェックし、その変動を月一回、管内の家畜保健衛生所に報告するよう業者に義務付けた。

 昨年三月に飼料工場でウイルスが検出された香川県では十一月、鳥インフルエンザを想定し、初めて防疫演習を実施。防護服の着脱、消毒作業手順などを確認した。広島県も家畜保健衛生所による農場巡回や発生時の対応マニュアル作成など対策に余念がない。


風評被害を懸念

 怖いのは、ウイルス変異で人から人に感染する新型インフルエンザになること。ほとんどの人は抗体を持たないために大流行の恐れがある。世界保健機関(WHO)は最悪の場合、世界で七千四百万人が死亡すると試算し、警鐘を鳴らす。

 厚生労働省は、重症化の防止が期待できるとされる抗ウイルス薬タミフルの二千五百万人分備蓄という目標を設定。岡山県十六万二千人分など、各都道府県にも割り当てて、確保に躍起だ。

 岡山県養鶏協会は、鳥インフルエンザに関する研修会を定期的に行い、最新情報の共有を図っている。「食べて人に感染した例は世界になく、風評被害が一番恐ろしい。鶏卵、鶏肉の信頼を守るために行政、業者が一丸となって誠実に対策に取り組む」と力を込めた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年12月19日 更新)

タグ: 健康医療・話題感染症

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