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生殖補助医療、法整備必要7割 岡山大・中塚教授ら全国調査

 第三者の精子、卵子提供、代理出産など「生殖補助医療」について、7割超の人が包括的な法の整備が「必要」と考えていることが、岡山大大学院の調査で分かった。生まれた子どもが遺伝上の親の情報にアクセスできる「出自を知る権利」を認めるべきとした人は6割を超えた。

 調査結果をまとめた中塚幹也教授(生殖医療)によると、国内では第三者の精子提供で生まれた子どもは1万人以上いるとされる。生殖補助医療に関する包括的な法律はないが、第三者から精子や卵子の提供を受けて生まれた子どもの親子関係を明確にする民法の特例法案を、与野党6党が今国会に共同提出。既に参院を通過しており、週内の衆院本会議で可決、成立する見通しだが、当事者らが求める「出自を知る権利」の規定などは先送りされている。

 岡山大の調査で、生殖補助医療の法整備について尋ねたところ、「必要」との回答は70・7%に上った。「(現状のまま)学会などのガイドラインでよい」の11・2%、「他の法律の範囲で規定すればよい」の10・3%などが続いた。

 「出自を知る権利」を認めるかについては65・3%が肯定的な回答で、4年前に行った同様の調査より15ポイントほど増えた。内訳は「そう思う」が26・5%、「どちらかといえばそう思う」が38・8%だった。

 中塚教授は「1980~90年代に法整備が進んだ欧州に比べ、日本は遅れている。生殖補助医療の対象に同性パートナーや独身女性を含むのかなど、議論すべきことは多い」と指摘している。

 調査は2019年6~9月、12都府県50地域で無作為抽出した約7千人に質問票を配布。914人から有効回答を得た。

 生殖補助医療 第三者から精子や卵子の提供を受けた体外受精、代理出産など、生殖技術の進歩で生まれた新しい不妊治療法。共同提出されている民法の特例法案は、女性が自分以外の卵子を使って出産した場合、卵子提供者ではなく出産した女性を母とするほか、妻が夫の同意を得て、夫以外から精子の提供を受けて妊娠した場合、夫は自分の子であることを否認できない―などと規定。子が「出自を知る権利」や、卵子や精子の売買やあっせんに関する規制は、2年後をめどに法的な措置を検討するとしている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年12月03日 更新)

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