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岡山県民 いま一度気を引き締めて 県医師会・松山会長に状況を聞く

「岡山でも感染者は急増している。今春の緊急事態宣言時を思い出し、いま一度気を引き締めていただきたい」と話す松山会長

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。岡山県内では重症化リスクが高い高齢者を中心に感染が広がり、13日には過去最多の38人が感染した。これから年末年始の帰省時期を迎え、さらなる事態悪化も懸念される。県内の診療体制はどうか、ワクチン接種はどうなるのか、岡山県医師会の松山正春会長に話を聞いた。

 ―今の状況をどう評価しているのか。

 国の観光支援事業「Go To トラベル」などによって人の移動が活発化し、全国で感染が広がっている。岡山でも感染者は急増し、危機感は強い。医療の需要と供給のバランスは危うい状態で何とか保たれているのが実情。均衡を失えば、あっという間に崩壊に陥りかねない。県民の皆さんは今春の緊急事態宣言時を思い出し、いま一度気を引き締めていただきたい。

 ―県内の医療機関の診療体制は。

 現在、約480の医療機関が、新型コロナウイルスに感染した疑いのある発熱患者を診る「診療・検査医療機関」の県指定を受けている。内科や小児科など感染症と関係の深い病院・診療所は県内でおよそ1千施設あり、その半分が対応している計算だ。ただ、風評被害を恐れて多くが施設名を公表していない。公表は4分の1程度で、一層の啓発が必要だと考えている。一方、医療資材についてはゴム手袋が不足気味で、値段も高騰して困っている。

 ―年末年始の診療はどうなるのか。

 29日から1月3日までの診療体制を整えている最中だ。県が、診療・検査医療機関の中から診療に応じてくれる施設を募っている。岡山と倉敷の保健所管内で各10程度、他の保健所管内でも4、5の医療機関が連日診療できる体制を整えたい。施設名は県のホームページで公表される。

 ―英国では、米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが共同開発したワクチンの接種が始まった。国内では来春からの接種も言われている。

 ファイザーのワクチンは、新しい技術が使われた過去に例のないタイプ。期待はあるが、副反応も含め慎重な対応が必要だ。国内でファイザー製を接種するとなれば、マイナス70度という超低温保管が必須。一度に送られてくるワクチンの最小包装単位は975回分なので、解凍や希釈のことを考えれば場所を集約しての集団接種が必要だろう。会場や必要な資機材、医師・看護師ら接種に携わる人員の確保が大きな課題となる。集団免疫の考え方から言えば、少なくとも岡山県民の6、7割、120万~130万人への接種が必要。これは大変な作業になるだろう。

 ―コロナ禍を受け、地域医療の重要性と脆弱(ぜいじゃく)性があらためて浮き彫りとなった。

 超高齢社会の中、国が進める地域包括ケアシステムには、感染症に対する考えがそれほど盛り込まれていなかった。病床数は大きく削減され、今の逼迫(ひっぱく)状況を生む一因にもなっている。やはりどこかに余裕をつくっておく必要はあるだろう。

 在宅医療の観点では、特に1人暮らしの場合、発熱があったときに誰が介入し、どのような医療を提供し、2次感染の予防策を講じるのか。不調になったときだけでなく、日頃の生活実態も含めて考えていかなければならない課題だろう。

 その一方で、かかりつけ医の重要性がクローズアップされた。コロナ禍とはいえ、地域医療をあらためて考え直す機会になるのではないか。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年12月14日 更新)

タグ: 感染症

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