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コロナ第3波 逼迫度増す医療機関 岡山県内、大手術や入院の制限も

新型コロナウイルスに感染した中等症患者を手当てする岡山市立市民病院の看護師ら(同病院提供)=22日

 11月から本格化した新型コロナウイルスの流行「第3波」を受け、岡山県内のコロナ患者を受け入れる主な医療機関の医療提供体制は、逼迫(ひっぱく)の度合いが増している。コロナ患者向けの病床がほぼ埋まった病院があるほか、他の病気の手術や入院制限に踏み切らざるを得ないケースも発生。医療現場からは「限られたマンパワーを考えると限界は近い」との声も上がっている。

 「治療しなければならない患者に、必要な医療を提供できない状態になっている」

 岡山大病院(岡山市)の金澤右病院長は危機感をあらわにする。

 同大病院は流行の第3波を受け、21日には集中治療室(ICU)内のコロナ重症患者用病床を4床から10床に増やした。中等・軽症用は6床を確保している。現在、受け入れている患者は重症3人、軽症4人で、病床使用率は43・7%だが「数字以上に事態は深刻」と金澤病院長は言う。

 切除を伴う手術などの場合、術後管理のため、患者はICUに入る。同大病院のICUは20床余りあるが、コロナ重症患者用に10床を充てたため、予定していた手術の2、3割を延期する事態に陥っている。

 金澤病院長は「コロナの重症患者が増えれば増えるほど、多くの医師や看護師が必要。10床が埋まれば他の手術を半減しなければならない恐れも出てくる」とする。

 岡山市立市民病院(同市)はコロナ患者向け病床が36床。現在は中等症、軽症の計11人が入院している。

 同病院によると、重症患者1人の治療に当たるのは医師1人と看護師3、4人。人工呼吸器を装着した患者に対応できる看護師は限られ、コロナの重症患者に人手を割けば、他の病気の重症患者のケアが行き届かなくなってしまうという。 「夏場の第2波は若者が中心で軽症患者が多かった。現在は高齢者が大半を占め、症状も重い。重症患者が次々に運ばれてくれば、他の診療に影響が及んでくる」と桐山英樹救急センター長。

 実際、11月中旬にはコロナ患者の入院は15人を数え、他の病気の手術や入院患者受け入れの延期だけでなく、救急搬送対応を断らざるを得なかったケースもあった。

 「コロナ患者向けの病床がほぼ埋まっている」とするのは、感染症指定医療機関・倉敷中央病院(倉敷市)。病床数は非公表だが、医師や看護師をその治療に振り向けているため、他の入院患者の受け入れを1割ほど減らしている。臨床検査・感染症科の橋本徹主任部長は「感染がどこまで広がるのか、いつまで続くのか見通せない。右往左往しながら対応している」と話す。

 県によると、県内のコロナ患者向け病床は302床で、15日現在の使用率は47・7%。県内では19日に60人、20日は111人の感染が確認されており、病床使用率は政府の分科会が示す最も深刻な「ステージ4(爆発的感染拡大)」の指標(50%以上)に達した可能性がある。

 県は21日、独自の「医療非常事態」を宣言。26日までに専用病床を100床程度増やす方針を示している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年12月22日 更新)

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