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インプラント治療 人工歯根を土台に義歯再建

 くぼき・たくお 井原高卒。岡山大大学院歯学研究科修了。同大歯学部助教授、同大大学院医歯学総合研究科助教授を経て、2003年から現職。同大病院副病院長など歴任。井原市出身。48歳。

 歯を含む口腔(こうくう)のケアは、健康維持に欠かせない。高度・多様化する歯科治療について、岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)の最前線をリポートする。



 人工歯根を埋め込み、それを土台に義歯を再建するインプラント治療。「周りの健康な歯にダメージを与えることなく、他の歯も長持ちさせる」と、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の窪木拓男教授(インプラント再生補綴(ほてつ)学)は語る。

 歯周病などで歯を失ったときの治療は、両隣の歯を支えに義歯をはめ込む固定式の「ブリッジ」、取り外し可能な「床義歯(入れ歯)」がある。だが「ブリッジは両隣の歯を削る上、かむ際に負担もかける。入れ歯はその金具で口内に違和感がある場合が多い」。インプラント治療はそうした欠点がなく、よくかめる。

 治療は局所麻酔をかけ、歯肉を切開し、あごの骨に専用ドリルで穴を開ける。骨と結合するチタン製の人工歯根(直径約4ミリ、長さ1〜1・5センチ)を埋め込み、縫合する。手術は1〜2時間ほど。人工歯根が安定した後、義歯を取り付ける。

 人工歯根が安定するまでに、骨が硬い下あごで約3カ月、骨が軟らかい上あごで約6カ月必要。最終的に義歯を装着するまで、プラスチック製の仮歯を入れておくことができる。同病院では、抜歯から仮歯取り付けまで一気に行う「抜歯即時埋入・即時修復」という術法も約3年前から取り入れている。

 「あごの骨量が少ない場合は人工的に骨を作る方法があり、高齢者にも適用できる。ただ入れ歯でもよくかめる人は、無理に替える必要はない。義歯の違和感や不調で苦しんでいる人には朗報」。糖尿病、心筋梗塞(こうそく)などで全身状態の悪い人は実施に際して注意が必要、喫煙者は術後経過が良くない場合がある。

 同病院補綴科(クラウンブリッジ)では、1989年度からインプラント治療を始め、2009年度までに延べ約900人に実施。保険の適用外で、治療費は1本30万円から。年に1回清掃し、破損やかみ合わせなどをチェックしている。

 治療は、事前にCT(コンピューター断層撮影装置)であごの骨の画像を撮り、人工歯根の長さ、義歯の厚みなどを十分考慮した上で行う。「下あごの神経を損傷し、まひさせる恐れもあり、CTを利用でき専門教育を受けた歯科医が施術すべき」と話す。

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 岡山大学病院補綴科(クラウンブリッジ)の新患受け付けは月、木曜日と第1、第3金曜日の午前8時半〜正午。問い合わせは同科(086―235―6791)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年08月02日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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