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(2)PFMって何ですか? 岡山市立市民病院入退院管理支援センター看護師長 江國千代子

江國千代子氏

 みなさん、PFMという言葉をご存じでしょうか? Patient Flow Managementの略で、入院患者さんの情報を入院前に把握し、問題解決に向けて早期に着手すると同時に、退院後までをサポートすることを目的とした複合的組織です。

 当院では2017年4月にPFMセンター(入退院管理支援センター)が新設され、医師や看護師、医療ソーシャルワーカー(MSW)、歯科衛生士、事務など複数の職種が同じフロアで業務に当たっています。現在11人の看護師(看護師長、副看護師長、療養支援看護師5人、退院支援看護師4人)が在籍し、療養支援看護師が予定入院の患者さんを対象に入院の説明を行っています。

 今回は、当センターにおける入院前の療養支援の具体的な取り組みについて紹介します。

 外来で入院が決まった患者さんは入退院センターへ来ていただきます。事務スタッフが入院案内、保険証の確認(限度額認定証の説明含む)などを行った後、プライバシーに配慮された相談室(個室)で、看護師が病歴聴取や入院生活の案内、持参薬の確認を行い、療養上のリスクアセスメントをします。プロフィールだけでなくアレルギー情報やかかりつけ医、介護保険の有無とサービス内容などの情報も聞き取ります。

 また、必要に応じて在宅での生活状況や、本人、家族の困り事も伺います。それらの情報を電子カルテに入力し病棟看護師と情報を共有します。患者さんからの多岐にわたる相談内容は必要に応じて適切な職種へつなぎ、安心して治療に臨めるようにサポートしています。

 例えば、「介護認定のことを聞いてみたい」と言われる患者さんには、MSWに制度の説明を依頼します。各職種が同一フロアの顔が見える関係の中で業務を行うことで、職種を越えてシームレスな関係が築けており、患者さんのかゆいところに手が届く対応ができていると感じています。

 患者さんから疑問があれば、インフォームド・コンセント(医師と患者との十分な情報を得た上での合意)の補足説明や、必要に応じて再度インフォームド・コンセントのセッティングを行うこともあります。休薬指導が必要であれば薬剤師が介入します。

 その他の取り組みとして、必要時は歯科受診の予約をとり患者さんに受診を促します。口腔内の衛生環境と術後の感染症、回復には密接な関係があります。口腔のトラブルで入院中の生活や治療に支障が出ないよう、必要な処置を受けることをお勧めしています。

 患者さんからは「入院までの流れや検査のことも詳しく説明してくれるので助かる」「家庭内での介護問題などの話を聞いてくれて気持ちが楽になった」「個室で話を聞いてくれるので話しやすい。診察室で聞けなかったことも聞きやすい」等の声をお聞きしています。

 患者さんにとって入院や手術は大きなイベントです。不安を抱いている患者さんやご家族の話を聞かせていただき、入院前から万全の準備を行うことで患者さんの不安や心配事が少しでも少なくなるよう努めています。今後も外来から入院、手術、退院までを通して「身体と心に優しい治療」の一端を担っていきたいと思います。

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 岡山市立市民病院(086―737―3000)

 えくに・ちよこ 倉敷看護専門学校卒業後、1994年に岡山市立市民病院に入職。2019年より入退院管理支援センター看護師長。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年01月18日 更新)

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