文字 

矯正 見た目も改善、生活の質高める

インプラントアンカー(矢印)を埋め込み、舌側(裏側)矯正装置を付けた上あごの歯列(上)。歯の表側からは矯正装置が目立たない

 やましろ・たかし 大阪府立北野高、大阪大歯学部卒。大阪大大学院歯学研究科修了。岡山大歯学部助教授、フィンランド・ヘルシンキ大学生物工学研究所客員研究員、大阪大大学院歯学研究科助教授などを経て、2006年から現職。大阪府吹田市出身。45歳。

 歯並びが悪いと、かみにくく、歯周病や発音障害を生じやすい。「歯列や、あご骨のずれを治す歯科矯正は見た目も改善し、QOL(生活の質)を高める」と、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の山城隆教授(歯科矯正学)は語る。

 かみ合わせが悪い「不正咬合(こうごう)」には、上顎(じょうがく)前突(ぜんとつ)(出っ歯)、反対咬合(受け口)、上下の前歯が開いた開咬、叢生(そうせい)(乱ぐい歯)などがあり、顔面のゆがみにもつながる。

 歯科矯正で一般的なエッジワイズ法は、歯の表面にブラケットという装置を接着し、ワイヤを使って歯を徐々に動かす。歯を抜く場合と、抜かずに行う場合があり、治療期間はそれぞれ2〜3年、1〜2年。終了後に同期間、リテーナーという保定装置を歯に装着し後戻りを防ぐ。

 この矯正法で最近利用するのが骨接合材の「インプラントアンカー」。骨と結合するチタン製ねじ(直径1・5ミリ、長さ8ミリ)をあごの骨に埋め込み、支点とする。「ワイヤでつないだ歯同士が引っ張り合う従来法に比べ、固定源があるため確実に動かせ、これまで不可能だった歯(全体)を押し下げることも可能。治療期間も大幅に短縮できる」

 目立たせない治療法では「舌側(裏側)矯正」がある。歯の裏側にブラケットを装着する方法で、表側から見えないが、矯正に要する時間が長くなる。いずれも保険適用外で、治療費はエッジワイズ法が60万〜70万円程度、アンカーを使えばさらに5万〜10万円かかり、舌側矯正は100万円以上。

 乳歯が永久歯に生え替わる6〜12歳ごろは骨の成長期で、歯の土台となるあご骨の成長を促進、抑制する矯正装置を主に使う。13歳ごろからはブラケットを用い、あごの骨を切る外科手術を行う場合は保険が適用される。

 岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)では、2001年からインプラントアンカーによる矯正治療を実施。欧米の学術専門誌への症例報告数は世界屈指で、矯正歯科専門医の教科書には岡山大のデータが使われている。

 治療はレントゲン写真や歯の模型から不正咬合の原因を探り、歯の角度、バランスなどを考慮して行う。「歯科矯正は欧米では普通の治療法であり、表情にも好影響を与える」と話す。


---------------------------------------------------------


 岡山大学病院矯正歯科の新患受け付けは月〜金曜日の午前8時半〜正午(電話予約した場合は午後1時〜3時も)。問い合わせは同科(086―235―6796)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年09月06日 更新)

タグ: 岡山大学病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ