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生きがい療法 免疫活性化、自然治癒力高める

がん体験を語り合った生きがい療法公開学習会=8月31日、倉敷市・国民宿舎良寛荘

温熱治療装置を操作する伊丹仁朗すばるクリニック院長

 「自分が自分の主治医になるんだ」「私が一日長く生きれば、同病の誰かを励ますことができる」

 37歳で胃がんを患って以来、甲状腺がん、子宮体がん、肝臓がん―と四つの重複がんを経験してきた渡田素子さん(63)。語りかける言葉にみじんも暗さはない。

 8月31日、倉敷市で開かれた生きがい療法公開学習会。渡田さんをはじめ4人のがん患者が体験を発表。看護学生や患者仲間と意見交換した。

 生きがい療法は、すばるクリニック(倉敷市新倉敷駅前、(電)086―525―8699)の伊丹仁朗院長が二十数年前から提唱している心理療法。日本の森田療法(9月6日付メディカ「医のちから」参照)と世界の精神腫瘍(しゅよう)学の成果を融合させた行動実践療法だ。

 患者とともに富士山やアルプス・モンブランへ登頂したり、漫才や喜劇を観劇に出かけたりと、「がん患者」のイメージを覆すユニークな試みで注目されたが、根本は免疫を活性化し、自然治癒力を高めることにある。

 実際、伊丹院長らの実験によると、3時間の漫才・喜劇の観劇後に白血球の一種NK(ナチュラルキラー)細胞の活性値を測定すると、19人中14人が上昇し、「笑い」でがん細胞を攻撃する力が増すことが裏付けられた。

 伊丹院長は研究を基に、森田療法の「あるがまま」「目的本位」などの思想を五つの生活指針に翻案。ユーモアスピーチに取り組む「笑わせ療法」、熱帯魚の絵などを描く「イメージトレーニング」など、具体的な行動プログラムを掲げた。

 現在、「生きがい療法実践会」に約500人が登録。普段は個人学習だが、倉敷、東京、名古屋、京都の4カ所で定期的に学習会を開き、互いの実践を報告し合っている。

 しかし近年、伊丹院長は、心と脳の働きによる自己治癒力に加え、手を尽くした身体面のがん治療が欠かせないと考えるようになった。通り一遍の「標準治療」で効果がないと見放されてしまった大勢の「がん難民」を診ているからだ。

 がん難民の多くにまだ可能な治療法があると信じる伊丹院長は、がん拠点病院にもあまり普及していないハイパーサーミア(温熱治療)装置を導入し、標準治療に含まれない新薬の処方にも積極的に対応。「笑いと生きがいを支えるベストのがん治療を求めることも、生きがい療法の実践そのもの」と説く。

 渡田さんも「がん治療を学び、知ることは、生きる『希望』につながる」とアドバイスしている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年09月20日 更新)

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