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(2)生理の痛み、ガマンしていませんか? 倉敷成人病センター婦人科主任副部長 柳井しおり

柳井しおり氏

 「生理痛はみんなあるんだから、ガマンするもの」、こう思って毎月の痛みに耐えていませんか? また、痛みが強くて勉強や仕事に支障がでることはありませんか? 実は生理痛が強くて仕事の効率が下がったりすることによる経済損失は6828億円ともいわれているほど、生理痛によるマイナスの影響は大きいものなのです。

 さらに、生理痛のある人のうち半分近くの人に子宮内膜症という病気が隠れているという報告もあります。子宮内膜症では卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)や、おなかの中に癒着ができ、生理痛や性交痛を生じるだけでなく、放っておくと不妊症や発がんの原因になることもあります。また、悪化すると周りの臓器に進んでゆき、大腸や膀胱(ぼうこう)の手術をしなければならないこともある怖い病気なのです。

 生理痛がある方が婦人科を受診された場合は、おなかの上からの診察、または内診で内膜症がないかチェックします。内膜症が疑われる場合は、程度によってホルモン治療や手術などの方法を提示します。痛み止めも症状の緩和にはなりますが本質的な治療にはならないため、内膜症が強く疑われる方にはホルモン療法をお勧めします。

 この病気の特徴は生理がくればくるほど悪くなるということです。逆に早いうちから対処しておけば重症化しなくてすむ可能性が高い病気です。生理がくる年齢になっていればLEP製剤(いわゆるピル)を服用することができます。年齢や持病に応じて他のホルモン剤を使用することもあります。病気が進んで、大きいチョコレート嚢胞がある場合や、痛み止めが効かないひどい生理痛の場合には手術療法をお勧めします。

 最近、海外では、「深部内膜症」という痛みの原因となる硬くなったおなかの中の病変を、なるべくとったほうがよいと考えられており、当院でも腹腔鏡(ふくくうきょう)で積極的に深部内膜症切除を行なっています。他の臓器に進行してしまった内膜症に対する難易度の高い手術も外科、泌尿器科の先生と協力することで当院ではほとんど腹腔鏡で可能です。

 意外と身近だけど怖い病気、それが子宮内膜症です。生理の痛みや排便痛・性交痛で困っている方、一度婦人科を受診してみましょう。

 当院では2020年1月に「子宮内膜症の専門外来」を開設し、木曜日午後に診察しています。婦人科の女性医師が、同じ目線で女性特有の悩みに寄り添いながらサポートしています。

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)

 やない・しおり 姫路西高校、山口大学医学部卒。2013年より倉敷成人病センター婦人科勤務。専門は腹腔鏡下手術。産科婦人科学会専門医・指導医、産科婦人科内視鏡学会技術認定医、内視鏡外科学会技術認定医、ロボット外科学会国内B級ライセンス、がん治療認定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年02月16日 更新)

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