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患者は「氏名と生年月日」言って 岡山県内2病院 誤認防止取り組み

患者に「氏名」「生年月日」の確認を呼び掛けるポスターと橋本主任部長=倉敷中央病院

 患者の誤認防止を狙いに、診療前などに「氏名」と「生年月日」を告げてもらう取り組みが、岡山県内の2病院で進められている。倉敷中央病院(倉敷市)と岡山大病院(岡山市)で、先行する倉敷中央病院の実施率は9割超。ただ、顔見知りの患者からの告知に違和感を覚える医療従事者もおり、その徹底は容易ではないという。

 <患者さんの確認を氏名と生年月日の2点で行います>

 倉敷中央病院(倉敷市)は診察室入り口などにポスターを掲示し、患者に理解を求める。

 同病院によると、外来では2週間に1人ほど、呼び出した患者とは違う患者が診察室に現れるケースがあるという。同姓や勘違いなどが原因だが「患者の誤認防止には、この2項目のチェックは欠かせない」と臨床検査・感染症科の橋本徹主任部長は言う。

 スタートは2014年。周知の積み重ねと、医療の質や安全性が世界基準に適合していることを示す米国の評価機関の認証取得に向けた取り組みが2項目のチェックの浸透を後押ししたとする。

 全国でじわりと広がる確認方法だが、国が実施を指導しているわけではない。きっかけについて、国は「1999年に横浜市の病院で起きた心臓と肺の手術患者の取り違えではないか」と推測する。

 岡山大病院では2019年、この取り組みを始めた。独自キャラクターをつくり、ポスター掲示もして普及を促すが、徹底には至っていない。

 同大病院が昨夏に行った調査では、実施しているとした職員は4割ほど。「紹介状を持って来院した患者に『名乗れ、生年月日を言え』とは言いにくい」「(患者から)『何度言わせるの』と立腹された」などの意見が寄せられた。

 日本医療機能評価機構(東京)への報告によると、2010年1月~15年6月に患者を間違えて薬を処方した件数は全国で13件。いずれも患者の確認が不十分だったという。

 日本医師会などでつくる一般社団法人・医療安全全国共同行動(同)の技術支援部会の山内桂子委員は「新型コロナウイルスの感染拡大でマスク着用が当たり前に。顔が見えにくく、声も聞き取りにくくなっており、誤認リスクは高まっている」と指摘。「多くの人に患者確認の意義を伝え、協力を仰ぐ必要がある」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年02月28日 更新)

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