障害者治療、摂食・嚥下リハビリ 絵・写真カード使い不安軽減
障害児の摂食指導に当たる歯科医
えぐさ・まさひこ 岡山大安寺高、日本大学松戸歯学部卒。旭川荘療育センター児童院歯科医長、岡山大学病院総合診療室助手などを経て、2002年から現職。その間、米国ワシントン大、ノースカロライナ大で研修。スペシャルオリンピックス・クリニカルディレクター。岡山市出身。49歳。
障害者歯科の患者は岡山県内外に及び、知的障害や広汎性発達障害者が過半数を占める。理解能力、新しい物事への適応能力が未発達なため歯科治療に支障を来す場合がある。「治療機器の音、におい、光といった感覚刺激に弱い面もあり、心身の状態を安定させる行動調整が必要となる」
患者の障害特性やコミュニケーション法を考慮した上で、用いているのが絵・写真カード。虫歯や歯周病の治療法を絵や写真で視覚的に分かりやすく紹介し、「歯磨きをします」といった最小限の文字情報とともに治療の手順を伝える。
さらに、患者に治療器具を持たせ、実際に動かしてみせる▽兄弟らが隣で治療している様子を見せる―ことを通し、治療への不安を軽減する。それでも治療への協力が困難な場合、全身麻酔などを使う。「ミクロ単位で行う治療の安全を期すため」で、年間患者約5千人の約1割に上る。
摂食・嚥下リハビリテーション外来では、脳性まひや脳卒中などで食べるのが難しかったり、食べ物が気管に入る誤嚥を起こしたりする小児から高齢者までを診療する。
診療は必要に応じ、実際に食べてもらったり、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を行う。前者は造影剤を混ぜた食べ物を口にしてもらい、エックス線を照射し、後者は内視鏡を鼻の穴から咽頭(いんとう)まで挿入し、誤嚥の有無など調べる。
検査結果を基に、食べ物がのみ込みやすいよう、あごを引く食事姿勢や介助法、液体がのみ込みにくい場合はとろみをつけることを助言。口や舌、のどの筋肉などを強化する訓練法も指導する。
障害者歯科では、障害に理解のある近所の受診先を望む患者ニーズを踏まえ、2007年から積極的に予防管理を地域の歯科医へ逆紹介するようにした。「将来的には患者の治療情報などを開業歯科医と共有する地域連携クリニカルパスを導入し、患者に最適な治療を支援したい」と話す。
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岡山大学病院特殊歯科総合治療部(障害者歯科治療、摂食・嚥下リハビリテーション外来)の新患受け付けは月〜金曜日の午前8時半〜11時(要予約)。問い合わせは同部第一総合診療室(086―235―6817)。
(2010年10月18日 更新)