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妊婦PCR検査で不安軽減 偽陽性・偽陰性のリスクも

「出産時の立ち会いや入院中の面会などが制限され、妊婦さんは孤立しがち。安心して出産、育児ができるよう支援したい」と話す田淵理事長

 国が費用を負担して、希望する妊婦が無料で新型コロナウイルスのPCR検査を受けられる事業が、岡山県でも昨年12月からスタートしている。不安を軽減できる半面、感染していないのに陽性となる「偽陽性」のリスクも。県医師会理事を務めるペリネイト母と子の病院(岡山市中区倉益)の田淵和久理事長に、検査の利点と注意点を尋ねた。

 事業は国の本年度第2次補正予算に盛り込まれ、発熱などの症状はないが感染の不安を抱える妊婦が対象。かかりつけの産科医療機関などで検査できる。県健康推進課によると、12月に約100件、1月は85件の利用があった。

 田淵理事長は「妊婦が新型コロナウイルスに感染しやすい、または重症化しやすいということはなく、感染が胎児に影響を及ぼすというデータもない」とするが、一方で「妊婦さんのコロナへの危機意識は高く、陰性が確認できれば安心して出産できる。感染の不安を払拭(ふっしょく)する手段は、今のところPCR検査以外にはない」と利点を話す。

 問題は検査の精度で「わずかだが『偽陽性』『偽陰性』となることがある」。陽性反応が出た場合はどうなるのか。岡山県内でも、感染した妊婦に対応する拠点病院が指定されており、予定していた施設で出産できない可能性があるという。さらに「胎児の感染を防ぐために帝王切開や計画分娩(ぶんべん)となることも。産後も一定期間、母子を分離して授乳などを制限せざるを得ないだろう」。

 「偽陽性」も同様の対応となり、本来なら通常の出産ができる女性が大きな負担を受けることになる。この点に注意が必要だ。

 「ただ、岡山県は検査時期を妊娠35~36週と少し早めに設定しており、出産までに陽性、陰性を見極める猶予がある。分娩施設が変わった場合でも、拠点病院は医療態勢が整っている」と田淵理事長。「妊娠中はただでさえストレスが多い。安定した心と体でお産に臨めるよう、検査についても主治医とよく相談してほしい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年03月07日 更新)

タグ: 女性お産感染症

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