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- (2)乳がんと甲状腺疾患 見た目もきれいな治療を 岡山ろうさい病院乳腺・甲状腺外科部長・乳癌治療乳房再建センター長 河合央
(2)乳がんと甲状腺疾患 見た目もきれいな治療を 岡山ろうさい病院乳腺・甲状腺外科部長・乳癌治療乳房再建センター長 河合央
同じ病気を治すのであれば、「見た目も治療前と変わらぬように」と希望される方は多いのではないでしょうか。患者さんは手術を受けたら終わりではなく、その後も「きず」とともに生活をしていかなくてはなりません。当科では主に、乳がんと甲状腺腫瘍に対して手術を行っておりますが、原疾患の治療はもとより整容性についても可能な限り満足していただけるよう心がけています。
■乳がん
乳がん治療は、その薬物療法の進歩とともに手術療法の意味合いが減りつつありますが、依然として手術なしでの治療は成り立ちません。20年ほど前までは、がんになった乳房を全て取り去る「乳房切除術」が標準的な術式でした。その後、がんを周囲の正常組織を含めてくり抜く乳房温存手術と、残った乳房への放射線療法を組み合わせた「乳房温存療法」でも乳房切除と変わらぬ生存率が得られることが分かり、現在の標準術式となっています。
しかしながら温存手術にも限界があり、腫瘍の状態で切除範囲が広くなってしまう場合は温存手術を行っても美容的な満足が得られないこともあります。満足度の低い乳腺に対して、コストと時間をかけて、副作用のリスクを考えながら放射線療法を行うことは勧められません。
当院では形成外科とともに乳房再建センターを開設しています。温存手術にこだわらず、乳房切除を行うべき患者さんに対しては、ご希望に合わせて再建術を検討していただくようにしています。
乳房再建術には大きく分けて(1)自家組織(自分の身体の一部)と(2)インプラント(人工物)を使用する方法があります。過去に乳房切除を受けられた方でも再建術を受けることができますので相談してください。
■甲状腺
甲状腺は首の前で喉ぼとけのすぐ下にあり、チョウが羽を広げたような形をしています。甲状腺ホルモンには、体の発育を促進して新陳代謝を盛んにする働きがあります=図。
甲状腺疾患に対する手術は、一般的には頸部(けいぶ、首)に4~15センチ程度の皮膚切開を加えて行います。術後は比較的早く安定した状態となりますが、女性の罹患(りかん)率が高く、人目に付きやすい首に手術のあとが残ることが整容面で問題となっていました。
2016年より甲状腺良性病変、18年より悪性腫瘍手術に対する内視鏡手術が保険収載されました。当科でも19年より内視鏡補助下甲状腺手術(Video―Assisted Neck Surgery=VANS法)を導入しています。
この術式では手術側の鎖骨の下に2・5センチの切開創を置いて、トンネルを掘るように皮膚の下のスペースを広げて甲状腺に到達します。頚部に5ミリの創を置いて内視鏡で観察しながら手術を行います。創部は女性用の襟の広い服でも隠れる部位になり整容性に優れています。
良性腫瘍に対する手術で首元に傷が残ってしまうことで、手術をためらっていた方に対しても診断目的の手術を受けやすくなったのではないかと思います。
◇
岡山ろうさい病院(086―262―0131)
かわい・ひろし 鳥取大学医学部卒業。岡山大学医学部第2外科、岡山市立市民病院等を経て2005年4月より岡山ろうさい病院勤務。日本外科学会指導医、日本乳癌学会専門医。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
■乳がん
乳がん治療は、その薬物療法の進歩とともに手術療法の意味合いが減りつつありますが、依然として手術なしでの治療は成り立ちません。20年ほど前までは、がんになった乳房を全て取り去る「乳房切除術」が標準的な術式でした。その後、がんを周囲の正常組織を含めてくり抜く乳房温存手術と、残った乳房への放射線療法を組み合わせた「乳房温存療法」でも乳房切除と変わらぬ生存率が得られることが分かり、現在の標準術式となっています。
しかしながら温存手術にも限界があり、腫瘍の状態で切除範囲が広くなってしまう場合は温存手術を行っても美容的な満足が得られないこともあります。満足度の低い乳腺に対して、コストと時間をかけて、副作用のリスクを考えながら放射線療法を行うことは勧められません。
当院では形成外科とともに乳房再建センターを開設しています。温存手術にこだわらず、乳房切除を行うべき患者さんに対しては、ご希望に合わせて再建術を検討していただくようにしています。
乳房再建術には大きく分けて(1)自家組織(自分の身体の一部)と(2)インプラント(人工物)を使用する方法があります。過去に乳房切除を受けられた方でも再建術を受けることができますので相談してください。
■甲状腺
甲状腺は首の前で喉ぼとけのすぐ下にあり、チョウが羽を広げたような形をしています。甲状腺ホルモンには、体の発育を促進して新陳代謝を盛んにする働きがあります=図。
甲状腺疾患に対する手術は、一般的には頸部(けいぶ、首)に4~15センチ程度の皮膚切開を加えて行います。術後は比較的早く安定した状態となりますが、女性の罹患(りかん)率が高く、人目に付きやすい首に手術のあとが残ることが整容面で問題となっていました。
2016年より甲状腺良性病変、18年より悪性腫瘍手術に対する内視鏡手術が保険収載されました。当科でも19年より内視鏡補助下甲状腺手術(Video―Assisted Neck Surgery=VANS法)を導入しています。
この術式では手術側の鎖骨の下に2・5センチの切開創を置いて、トンネルを掘るように皮膚の下のスペースを広げて甲状腺に到達します。頚部に5ミリの創を置いて内視鏡で観察しながら手術を行います。創部は女性用の襟の広い服でも隠れる部位になり整容性に優れています。
良性腫瘍に対する手術で首元に傷が残ってしまうことで、手術をためらっていた方に対しても診断目的の手術を受けやすくなったのではないかと思います。
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岡山ろうさい病院(086―262―0131)
かわい・ひろし 鳥取大学医学部卒業。岡山大学医学部第2外科、岡山市立市民病院等を経て2005年4月より岡山ろうさい病院勤務。日本外科学会指導医、日本乳癌学会専門医。医学博士。
(2021年03月17日 更新)