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メタボ招く分子特定 岡山大病院・四方教授ら 糖尿病予防薬 開発に期待

四方賢一教授

佐藤千景助教

 岡山大病院新医療研究開発センター(岡山市北区鹿田町)の四方賢一教授(腎・免疫・内分泌代謝内科学)と同大大学院の佐藤千景助教(糖尿病性腎症治療学)らのグループは、メタボリック症候群の発症に重要な働きをする物質の一つを突き止めた。糖尿病や動脈硬化の予防薬開発につながる成果として米・糖尿病学会誌「ディアベテス」(電子版)に掲載された。

 メタボリック症候群は、内臓脂肪が蓄積することにより免疫細胞の白血球が脂肪組織内に入り込んで炎症を起こし、さらに白血球の分泌するタンパク質がインスリンの効果を妨げて糖尿病や動脈硬化を誘発する。血管内を流れる白血球が血管の壁(血管内皮)から脂肪組織に侵入する際、白血球を壁にくっつける役割を担う接着分子は、これまで特定されていなかった。

 佐藤助教らは遺伝的に太りやすいマウスと高脂肪のえさで太ったマウス両方の内臓脂肪の血管に「PSGL―1」という分子が増えていることを発見。白血球、血管内皮の細胞表面に存在し、内臓脂肪でも白血球の周りに多くあることから、接着分子であると推測した。

 実験では、PSGL―1をなくしたマウスと普通のマウスにそれぞれ高脂肪のえさを食べさせて比較。体重は変わらないものの、PSGL―1をなくしたマウスの方が、平均で中性脂肪が4割、悪玉コレステロールが6割少なかった。

 さらにインスリン注射後の血糖値も、普通のマウスが15%減だったのに対し、PSGL―1をなくしたマウスは40%低下し、効果が改善。糖尿病の場合、空腹時に過剰に出るインスリン量も、普通のマウスより3分の1近く少ないことを確認した。

 糖尿病患者数は予備軍も含めると国内で2210万人(2007年)と推計される。四方教授は「PSGL―1の働きを抑制できれば、肥満状態の人の糖尿病や動脈硬化を予防できる可能性がある。働きを抑える候補がいくつかあり、新しい治療薬の開発を進めていきたい」と話している。

画期的な研究

池上博司近畿大教授(内分泌・代謝・糖尿病内科学)の話 メタボリック症候群が起きるメカニズムを解明した意義は大きい。インスリンの効果を高められれば、さまざまな病気の発症を抑えられ、画期的な研究だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年10月29日 更新)

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