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歯周病治療 全身疾患予防へ外科処置も

 たかしば・しょうご 福山誠之館高、岡山大歯学部卒。岡山大大学院歯学研究科修了。米国イーストマンデンタルセンター研究員、岡山大歯学部助手、助教授などを経て、2002年から現職。庄原市出身。49歳。

 成人の約8割がかかっている歯周病。「歯を失う原因の約半数を占める生活習慣病。重症になるまで気付かない人が多い『沈黙の病気』で、さまざまな全身疾患も進行させる」と、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の高柴正悟教授(歯周病態学)は注意を呼び掛ける。

 歯周病は細菌感染によって、歯を支える歯周組織(歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨)が破壊される疾患=図参照。歯肉の範囲に限られる歯肉炎と、歯周組織全体に及ぶ歯周炎に分類される。

 500〜700種類に上る口内細菌のうち、代表的な歯周病細菌はジンジバリス菌など十数種類。その固まりである歯(し)垢(こう)(プラーク)が、歯と歯肉の間の歯肉溝にたまり、1週間以内に起こすのが歯肉炎。はれて赤くなり、血や膿(うみ)が出る。さらに歯周炎になると、歯と骨の結合が破壊され、歯を失う。

 歯周病の大きな問題は、全身に悪影響を及ぼす点。「放置すれば誤嚥(ごえん)性肺炎、糖尿病、心筋梗塞(こうそく)や、早産、低体重児出産などを招く可能性が高まる」

 治療は感染源の除去、炎症の制御、歯周組織の形態改善が柱。まず歯磨き法を改善しながら、スケーラーという器具を使い、歯垢が石灰化した歯石を取り除く。歯肉溝が深くなった歯周ポケットがあると、痛みがないよう局所麻酔をして歯石を除去し、抗菌剤などを注入する。

 歯周組織の形態を改善する外科処置では、骨充(じゅう)填(てん)法が有効。局所麻酔をかけ、歯肉にメスを入れはがす。続いて歯槽骨の欠損部に、同骨から削った骨を詰め、歯肉を戻し縫合する。手術は約2時間。3カ月から1年かけ、歯槽骨の再生を促す。

 岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)では、類似手術として、本人から採取した多血小板血漿(けっしょう)などを用い、歯槽骨や歯根膜を再生させる先進的な医療の研究も重ねている。

 診断は、歯周組織検査とレントゲン検査などから下すが、高柴教授らが開発した検査キットによる簡便な検査法もある。指先に針を刺して血液を1滴ほど採り、細菌感染によって産生される血中の抗体量から、感染の度合いや歯周病のタイプを調べる。

 予防法は磨き残しをなくすことだが「細菌と免疫のバランスが崩れると発症し、未成年でも重症化する。自覚症状がなくても年1回、誕生月には歯科を受診して検査を」と語る。


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 岡山大学病院歯周科の新患受け付けは水、木曜日と第2、第4金曜日の午前8時半〜11時。問い合わせは総合診断室(予診室、086―235―6816)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年11月01日 更新)

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