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有床義歯 残存歯守り誤嚥防ぐ効果も

皆木教授が開発した総入れ歯「咬合・嚥下義歯」。下あご側(下)は要介護高齢者が装着しやすいよう、前歯8本分を取り除いている

皆木省吾教授

 歯周病や虫歯で失った歯を補う方法として、取り外し可能な有床義歯(入れ歯)がある。「歯が抜けたまま放置すれば、かみ合わせ、発音や見た目を悪くする。有床義歯は、残った歯が過度の負担を受け、抜けるのを防ぐ」と、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の皆木省吾教授(咬合(こうごう)・有床義歯補綴(ほてつ)学)は効用を語る。

 有床義歯には総入れ歯、部分入れ歯がある。歯をすべて失った場合にはめる総入れ歯は、人工の歯と、歯肉や粘膜に接する床(しょう)でできている。部分的に補う部分入れ歯は、残存した近くの歯に「クラスプ」という留め金を掛けて装着する。

 保険が使えるのは、プラスチック製のレジン床義歯。加工や修理がしやすい半面、床の厚みが1・5~2ミリある上に割れやすく、飲食物の熱さを伝えにくい欠点を持つ。

 一方、金属床義歯は床がチタンなどの金属製で壊れにくく、厚さ約0・5ミリと薄くて熱さも伝わりやすい。ただし、保険が一部適用される場合もあるが、自費診療。自費診療では他に、残った歯の根部分に磁性合金を埋め、入れ歯裏には磁石を付け、装着を安定させる「磁性アタッチメント義歯」などがある。

 岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)では、患者の歯型をシリコン印象材などでとり、かみ合わせを調べ、調整した上で入れ歯を作る。装着完了まで、1カ月おきに計5回の通院が必要となる。

 入れ歯を長持ちさせるには、細菌の固まりである歯(し)垢(こう)(プラーク)の除去が欠かせない。「付着した細菌は歯ブラシだけでは取り除けず、日に1回、義歯洗浄剤や超音波洗浄器を使うことを勧める」

 要介護高齢者に有効な総入れ歯が2008年、皆木教授が開発した「咬合・嚥下(えんげ)義歯」。口を開ける際、下唇に当たって外れやすい下顎の入れ歯から、前歯8本分を取り除いた形状。「入れ歯が安定して、かむ機能が回復し、誤嚥や転倒の防止効果がある。食事の介助時も、スプーンを口内に入れやすい」と話す。

 入れ歯は、調子が良ければ使い続けた方がいい。だが、年とともに歯槽骨が減り、歯茎の形が変わって合わなくなってくる。「違和感を覚える前に、半年に1回は歯科を受診し、適合状態をチェックしてほしい」と呼び掛ける。

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 岡山大学病院補綴科(咬合・義歯)の新患受け付けは火、水曜日と第2、第4金曜日の午前8時半~11時。問い合わせは総合診断室(予診室、086―235―6816)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年12月06日 更新)

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