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脳卒中、心筋梗塞・狭心症、子どもの急病 岡山赤十字病院 岡山県南東部の救急拠点 高い救命率支える診療体制

朝のカンファレンスで、脳卒中患者の診断画像を見ながら、治療について意見を交わす医師、看護師、リハビリスタッフ

(写真左から)楢原幸二小児科部長、氏平徹循環器科部長、井上剛脳卒中科部長

 岡山赤十字病院は、岡山市を中心とする岡山県南東部の医療エリアで唯一、救命救急センターを持つ救急医療の拠点だ。中でも、今のシーズンに多発し、命を脅かす脳卒中や心筋梗塞・狭心症の治療に近年、力を注いでいる。小児救急医療でも県内屈指の実績がある。

 脳卒中科

 岡山赤十字病院にかかる脳卒中患者は年300人前後に上る。その8割は、脳血管が詰まる脳梗塞。主に脳卒中科が内科治療を行う。残る2割は血管が破れる脳出血とくも膜下出血。脳神経外科が手術などで治療する。

 このうち脳卒中科は複数の診療科に分かれていた治療の窓口をまとめ迅速化するため2008年4月に新設した。医師は2人。血管に詰まった血の塊(血栓)を溶かす注射薬「tPA」を積極的に活用している。

 tPAは今、最も有効とされる脳梗塞の治療法だが、脳出血などの副作用がある。使用は発症3時間以内に限られ、診療体制が整っていないと治療が難しい。同病院も脳卒中科設置まで2年半の使用は2例だったが、ここ2年半は約100例と急増。使用できたのは脳梗塞患者のまだ2割弱だが、全国の医療機関の中でも極めて高い使用率という。

 脳梗塞は命を取り留めても手足のまひなどが残ることが多いが、「tPAを使った患者の半分強は退院時、介助の必要がないほど回復している」と井上剛部長は効果を語る。

 もう一つ、後遺症を防ぐため重視するのが早期リハビリ。入院翌日からベッドで手足の関節を動かし、軽症なら歩行訓練も行う。さらに、井上部長は「効果的な治療を目指し毎朝、医師や看護師、リハビリスタッフらでカンファレンスを重ね、チーム医療を心掛けている」と話す。

 循環器科

 心臓の冠動脈が詰まる心筋梗塞、その一歩手前で冠動脈が狭くなる狭心症は年250~300人が受診。50~60代の男性に多い。その大半で行うのがカテーテル治療。手首や足の付け根から血管に細い管(カテーテル)を入れ、詰まったり狭くなったりした箇所を広げる。

 同病院の心筋梗塞・狭心症患者の特徴は急患の多さ。7割が一般の外来でなく、救急車などで救命救急センターに運ばれて来る。心臓マッサージなどをしながら緊急のカテーテル治療することも年70例前後に上る。

 治療を担うのは循環器科の7人の医師。「治療は時間勝負。発症から90分以内に治療しないと救命率が下がる」と氏平徹部長。医師は日ごろからトレーニングを積んでいる。

 さらに心掛けるのが「夜も昼と同じクオリティーの治療をすること」。そのため夜間、休日も同科の医師1人が当直勤務し、他に1人が急患に備え自宅待機する。その結果、救命率は95%前後に達し、多くの患者は10日前後の入院後、自分の足で歩いて退院する。

 小児科

 救命救急センターの患者の3人に1人に当たる年1万2千人前後は子ども。小児科が24時間体制で診療する。

 症状は発熱、嘔吐(おうと)、下痢、けいれんなど。風邪や胃腸炎が多く、8~9割の患者は応急処置だけで入院せずに帰宅する。だが、中には髄膜炎や脳炎、肺炎、ぜんそく発作など緊急の治療が必要な患者もいる。楢原幸二部長は「重症例を見逃さないよう最も注意している」と語る。

 小児科の医師は8人。夜間、休日も当番を決め誰かが救命救急センターに勤務する。ただ、新型インフルエンザが流行した昨冬のように100人以上の患者が押し寄せる休日もあり、患者の待ち時間は長くなりがちだ。

 そこで、医師の診察前に患者の重症度を判定するトリアージ担当の看護師を9月、同センターに配置。重症患者は優先的に診療できるようにした。

 地元開業医も小児救急医療を支援。有志15人が1人ずつ、毎週木曜日午後8時~11時、同センターで軽症患者を診療する。楢原部長は「その間、当直医は重症や入院患者の治療に専念でき、肉体、精神的に余裕を持てる」と感謝している。

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岡山赤十字病院

住所 〒700―8607 岡山市北区青江2の1の1

電話 086―222―8811

メールアドレス

   oka-rcgh@okayama-med.jrc.or.jp
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年12月21日 更新)

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