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小児歯科 健全な永久歯列へ予防と治療

松村誠士准教授(小児歯科学)

 子どもの口腔(こうくう)の正常な発達に向け、疾患予防や治療に当たる小児歯科。「乳児期から正しい食習慣と歯磨きを親子で続けることが、健全な永久歯列をつくる」と、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の松村誠士准教授(小児歯科学)は語る。

 乳歯は生後6カ月ごろ、下の前歯から生え始め、3歳ごろまでに全20本がそろう。永久歯は、乳歯列の奥に6歳ごろ第一大臼歯が、さらに12歳ごろ後方に第二大臼歯が生え、その間に乳歯が永久歯に生え替わる。最奥部に20歳ごろ、第三大臼歯(親知らず)が生える人もおり、永久歯は28~32本=図参照。

 子どもは甘い物好きで、虫歯になりやすく注意が必要。「乳歯を虫歯で早期に失うと、永久歯の生える場所が確保されず歯並び、かみ合わせが悪くなる。特に『6歳臼歯』と呼ばれる第一大臼歯は、最も大きい要の歯なので大事にしてほしい」

 虫歯は、細菌の固まりである歯(し)垢(こう)(プラーク)の中の主にミュータンス菌が砂糖を分解してできる酸により、歯が溶け出すのが発端。歯は本来、唾液により歯表面にカルシウムイオンが取り込まれ、守られているが、歯垢が歯の溝や付け根に付着すると虫歯が進行する。

 予防法は間食の時間を決め、虫歯を生じる砂糖の摂取量を減らす。睡眠中は唾液の分泌が少ないため、寝る前に歯を丁寧に磨くことも大切。「歯が生え始めたら、日に1回は赤ちゃん用歯ブラシで歯磨きを習慣付けよう。歯磨き粉は、うがいができる年齢から使えばいい」と言う。

 岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)では、虫歯の状況やなりやすさを調べる齲蝕(うしょく)活動性試験「カリオスタット」を行う。歯の表面から綿棒で歯垢を取り、砂糖などを配合した試験液に入れる。虫歯菌の強さに応じ、危険度が高い順に黄、黄緑色、心配の少ない緑色や、青色まで変色し、予防・治療に役立てる。

 治療は保護者同伴の下、痛みや恐怖を軽減することに留意し、虫歯の進行を止める処置から始める。診療台で優しく声掛けし、音楽のCDを流してリラックスさせ、フッ素塗布、フッ素入りセメントを患部に詰めるなどする。麻酔の際は、針を見せずに注射を打つ工夫もしている。

 「小児歯科治療は長期にわたり口腔内を改善していくため、子どもだけでなく保護者も正しい口腔管理を学べる」と話す。

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 まつむら・せいし 高松高、大阪大歯学部卒。同学部付属病院医員、岡山大歯学部助教授、米国ワシントン大歯学部客員研究員などを経て、2005年から現職。呉市出身。61歳。

 岡山大学病院小児歯科の新患受け付けは月~金曜日の午前8時半~11時。問い合わせは同科(086―235―6810)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年12月21日 更新)

タグ: 健康子供岡山大学病院

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