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9割のコロナ病床が埋まり危機的 「ステージ4」岡山の病院ルポ

コロナの重症患者の病状などについて情報共有する医師や看護師ら=12日午前9時32分(岡山市立市民病院提供)

医療用ガウンなどを身に着け、コロナ患者のケアに向かう看護師=11日午後3時32分(同病院提供)

 新型コロナウイルスの流行「第4波」が猛威を振るい、岡山県でも感染状況に関する判断が切迫度が最も高い「ステージ4(爆発的感染拡大)」に引き上げられた中、県内の医療提供体制は危機的な状況に陥ろうとしている。県全体のコロナ患者向け病床の使用率(5~11日)は71・1%となり、過去最悪の水準に。約9割の同病床が埋まる岡山市立市民病院(岡山市北区北長瀬表町)でケアに当たる看護師の姿を通じ、病院の現状を追った。

 「疲れは日に日に増しているが、コロナと闘う患者の力になりたいとの思いで何とか踏ん張っている」

 12日午後。重症患者のケアを終え、スタッフステーションに戻った看護師の男性(36)が使命感を口にした。

 コロナ患者向け病床は西病棟5階。決まった医師や看護師らしか立ち入りが許されない空間だ。ケアに向かうときは医療用ガウンにマスク、ヘッドキャップ、ゴーグルを身に着けなければならず、手袋は三重にしているという。

 外部にウイルスが漏れないよう陰圧化された重症患者用の個室では、人工呼吸器が装着された患者がベッドに横たわっている。看護師は患者の血圧や動脈血酸素飽和度といったバイタルサイン(生命兆候)を確認し、歯磨きなどを介助。床擦れを防ぐため行う体位の入れ替えは、5人がかりで行うこともある。

 スムーズなら1回の対応時間は患者1人当たり1時間半ほどだが、容体が不安定な場合は3時間かかることも。これを昼夜問わずに2、3時間おきに繰り返す。「ガウンが蒸れ、汗でびっしょり。長時間の看護で、脱水症状になった同僚もいる」と看護師の男性(36)。

手術延期も

 感染症指定医療機関として、昨年3月からコロナ患者の入院を受け入れる岡山市立市民病院。コロナ患者向け病床28床のうち重症用は4床、軽症・中等症用は24床で、患者は今年3月下旬に7人まで減った。だが、4月に入り、変異株の広がりなどで入院患者が急増。5月9日には4人を受け入れるなど、12日時点の患者は25人。病床使用率は89・3%になった。

 重症患者は8人。人工呼吸器がない軽症・中等症用を4床転用し、急場をしのいでいる。

 毎日のように運び込まれてくる患者に対応するため、当初は25人ほどだった担当の看護師は2倍に増やした。術後管理に当たるICU(集中治療室)の看護師が含まれていることから、急を要さない他疾患の患者の手術を延期するケースも増え始めた。救急搬送にも影響が出ており、急患の受け入れ要請を5月は50~60件断らざるを得なかったという。

転院進まず

 コロナから回復したが、別の疾患があったり、リハビリが必要だったりする高齢者らの転院が思うように進まないことも、病床使用率が高止まりする要因になっている。

 岡山市立市民病院によると、コロナ患者の治療はおおむね2週間で一区切りする。今、コロナ患者向け病床にいる6人は一般病床にいつでも移れる状態だが、他病院に転院を打診しても受け入れ先が見つからない。1カ月以上も転院先を探し続けている患者もいるという。

 「今のまま、コロナ用のベッドが空かなければ、大阪のように自宅療養中に容体が急変し、亡くなる人が続出してしまう」と桐山英樹・救急センター長。「まさに危機的な状況。最悪の事態を回避するためにも、誰もがこれまで以上に真剣に感染予防に取り組まなければならない」と訴える。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年05月13日 更新)

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