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瞳孔の血管消失 虹彩の動き関与 岡山大大学院グループ発見 目の仕組み解明期待

生後2週間目のラットの瞳孔。自然な状態(左)に比べ、虹彩の動きを抑制すると血管が残った(右)

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科眼科学の大学院生・森實祐基さん(33)と、同研究科システム循環生理学の毛利聡講師(40)らの研究グループが、眼球内に入る光量を調節する目の虹彩の動きが、生後に不要になる瞳孔(黒目)の毛細血管の消失にも関与していることを動物実験で突き止めた。まだ未解明な部分が多い目の仕組みを探る手掛かりの一つとして、米科学誌サイエンスと米生理学会誌で紹介された。

 虹彩は瞳孔の外周で、カメラの絞りのように開閉して瞳孔の大きさを変える。毛細血管は赤血球とほぼ同じ直径約八マイクロメートル(一マイクロメートルは千分の一ミリ)と超微細なため、通常の顕微鏡では血液の流れを見ることはできず、研究グループは解像度を高めた生体顕微鏡を開発して調べた。

 動物の胎児の瞳孔は、水晶体など眼球内の組織に栄養を補給するため無数の毛細血管で覆われている。目が形作られると血管は不要になり、ラットの場合、生後約二週間で消失することが分かっている。

 研究グループは、虹彩が動くと瞳孔の血流が一時的に停止することを生体顕微鏡で確認。生まれたばかりのラットを二グループに分け、虹彩の動きを止め瞳孔を開いたままにする点眼液を目に入れたグループと、自然な状態のグループで、血管の状態を調べた。

 その結果、瞳孔を開いたグループは生後百日たっても血管は残っていたが、自然な状態のラットは数日後に消え始め、二週間後には完全になくなった。虹彩の動きが血流に影響を及ぼし、血管の消失に関与しているとみられる。

 ヒトの場合は妊娠六カ月ごろに消失するとみられ、母体内で何らかの理由で虹彩が動いている可能性があるという。

 森實さんは「目が形成される仕組みの解明や、瞳孔に血管が残って物が見えづらくなる瞳孔膜遺残との関係について研究を進めたい」と話している。


極めて独創的

 辻岡克彦川崎医科大教授(循環生理学)の話 瞳孔の血管消失が虹彩の動きによる血流の増減によることを発見した点は極めて独創的。さらなる発展の可能性を秘めた研究だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年01月23日 更新)

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