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がん患者の口腔管理 より良いがん治療に貢献

そが・よしひこ 滋賀県立彦根東高、岡山大歯学部卒。同大大学院歯学研究科修了。国立療養所邑久光明園歯科医長などを経て、2008年1月から同大病院歯周科助教、同9月から同病院周術期管理センター歯科部門長を兼任。滋賀県彦根市出身。37歳。

 「抗がん剤治療をすると、平常時には何でもなかった歯周病や虫歯から、大変な感染症が起きる場合もあり、歯科医による口腔(こうくう)感染管理が必要」と、岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)周術期管理センター歯科部門長で歯周科助教の曽我賢彦氏は力説する。

 がんの化学療法や放射線照射は、がん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を及ぼし、抵抗力が落ちる。そのため「歯周病、虫歯、親知らず(第三大臼歯)の処置は、がん治療前にできるだけ早く済ませておきたい」。それは抗生剤の使用を減らし、抗生剤が効きにくい耐性菌の発生抑制にもつながるという。

 口腔粘膜障害と呼ばれる重度の口内炎、口腔乾燥といった副作用も生じやすく、対策として口内を清潔にし、潤いを保つ口腔衛生管理が大切。口腔粘膜を傷付けないよう、歯磨きにはやわらかい毛の歯ブラシを選び、丁寧にブラッシングする。がん治療によって乾燥しやすくなる口内には、人工唾液(口腔粘膜保湿剤)を利用する。

 例えば白血病では、大量化学療法や全身放射線治療後、骨髄などからの造血幹細胞を移植する治療がある。移植から3週間前後で幹細胞は生着するが、その間は白血球数がほぼゼロになる。「本来は感染力が極めて弱い菌でも、重い感染症の敗血症を引き起こしやすくなる」

 そこで、曽我助教らは移植後から週1回、患者を回診し、口内の観察、処置を実施。移植前も化学療法の合間に、白血球数の回復が見られるタイミングで歯科治療を積極的に行い、感染予防、口腔粘膜障害の軽減に寄与している。

 がん治療では手術も多い。同病院は2008年9月、手術を受ける患者を術前から術後まで、診療科の枠を超えてケアする周術期管理センターを開設。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士らと連携し、歯科医、歯科衛生士、歯科技工士が肺、食道がん患者らの歯科治療▽口腔清掃▽気管挿管する時に歯の損傷を防ぐプロテクター作製▽術前後の摂食・嚥下(えんげ)機能評価、訓練―などを行っている。

 「医科、歯科が連携し、治療に当たることはがん患者らに有益。口腔ケアの取り組みは看護師にも広がり、成果を挙げている」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年02月21日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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