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(2)管理栄養士の立場から 倉敷平成病院栄養科科長 小野詠子(管理栄養士)

栄養指導では、普段の食事や運動の状況、生活リズムについても細かく聞いて、生活習慣の改善案を提案します

小野詠子氏

 「糖尿病だと好きな物は食べられない」と思っていませんか? 今回は、当院を受診された患者さんに、私たち管理栄養士がどのように関わっているのかについてのお話です。

 ■食事内容の調査

 普段の食事について、何をどれだけ食べているのか、誰と食べているのかをお聞きします。

 (1)ご飯やパン、麺だけになっていないか、肉魚などのタンパク質や野菜は適量か。

 (2)菓子や果物ばかり食べていないか。

 (3)糖質制限にはまっていないか。

 (4)家族を優先し、自分は残り物になっていないか。

 (5)水分はアルコール、ジュース、コーヒーばかりではないか。

 ■生活リズム、運動量の調査

 いつ食べて、いつ動いているのかをお聞きします。

 (1)起きてすぐ食べるのか、食べずに散歩に行くのか。

 (2)午前中は家事でいろいろ動くけれど午後は昼寝していたり、夕食の後はすぐ寝たりしていないか。

 (3)仕事が忙しいと食事もとらずに頑張っていないか。夕食は遅くないか。

 (4)家族が帰るまで食事を食べずに待っていないか。

 (5)ジムに通っていたけれどコロナで行けていないのではないか。

 ■身長・体重・体組成の測定

 身長、体重、腹囲を測定し、InBodyで筋肉量や体脂肪量、基礎代謝を算出します。

 基礎代謝は人間の必要最低限のエネルギーなので、身体を動かす分の200キロカロリーを加えて指示エネルギーとします。

 筋肉はブドウ糖を取り込み、消費することで血糖値を下げる働きがあるので、減量する場合も筋肉は残さなければいけません。体重が減ればいいだろうと、極端に食事量を減らし痩せてくる方もいますが、間違いです。

 ■家族の協力、介護保険サービスの利用

 これから食生活の改善に取り組むにあたり、ご家族の協力は得られるのか。高齢の方には介護度や利用されているサービス内容をお聞きします。

 以上のような内容を初回は細かく聞かせていただき、患者さんの現状と問題点を把握します。「3食規則正しく、主食・タンパク質・野菜をバランスよく食べる」を基本として改善案を提案します。好きなものを食べるために、食事の組み合わせや運動とのバランス、ちょっとした工夫を紹介しますので、実際の取り組み方を一緒に考えましょう。

 2回目以降は体重、HbA1c、体脂肪率、筋肉量などを確認し、経過を評価します。改善していれば喜び、思い込みや間違いがあれば訂正したり別の方法を考えるなど個人に対応した食事療法を常に考えています。血糖コントロールを良好に保つため、一緒に食事療法に取り組みましょう!

     ◇

 倉敷平成病院(086―427―1111)

 おの・えいこ 島根県立大社高等学校、ノートルダム清心女子大学人間生活学部食品栄養学科卒業。2002年4月、倉敷平成病院入職。管理栄養士、糖尿病療養指導士、NST専門療法士、認定褥瘡管理栄養士、骨粗鬆症マネージャー、サルコペニア・フレイル指導士。日本褥瘡学会評議員。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年06月21日 更新)

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