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金属アレルギー 検査で抗原特定し除去

金属アレルギーに対する治療

口腔内金属の元素分析をする峯助教。電子顕微鏡など専用装置を使い、採取した微量の合金の含有金属を調べる 

 みね・あつし 大阪教育大付属高校天王寺校舎、岡山大歯学部卒。同大大学院歯学研究科修了。岡山大学病院助手、ベルギーのルーベン・カトリック大歯学部研究員などを経て、2010年から現職。愛媛県新居浜市出身。37歳。

 腕時計、ネックレスで皮膚がかぶれる金属アレルギーは、歯科用の金属材料によっても起きる。「症例は女性に多い。口の中に限らず、手や足に症状がよく出るので注意が必要」と、岡山大学病院補綴(ほてつ)科(クラウンブリッジ)の峯篤史助教(歯科材料学)は語る。

 金属アレルギーの抗原は、溶け出した金属イオンと、体内のタンパク質が結合した「ハプテン」。この物質が血流で全身に運ばれ、免疫反応がマイナスに働く結果、炎症などを生じる。

 アレルギーを起こしやすい金属は、ニッケル、水銀、クロム、コバルト、亜鉛、パラジウムなど。症状は、金属と直接触れる口内に炎症が起きる場合もあるが、手のひら、足の裏にかゆみや、水膨れが生じる掌蹠(しょうせき)膿疱(のうほう)症が多い。

 同病院では補綴科、皮膚科、口腔(こうくう)外科などが連携し、口腔内金属が原因のアレルギーを迅速に診断、分析、治療することができる。

 診断の上で最も有用な検査が皮膚科で行う「パッチテスト」。背中や腕に金属をイオン化させた試料を張って48時間後に取り、48時間後、72時間後、7日後の皮膚反応を確認する。「検査金属は17種類。皮膚反応を診るため、皮膚科医の判断が重要」という。

 次に、口腔内金属を調べる。歯の詰め物やかぶせ、義歯に使っている合金を回転切削器具で微量採取し、電子顕微鏡などの専用装置で元素分析する。「パッチテストで陽性の金属が含まれていれば、口の中の金属が原因物質と判断できる」

 抗原がほぼ特定された際の治療は、原因除去療法が有効。抗原の金属を除去し、プラスチックの仮歯を装着する。「症状の変化が緩やかな場合が多く、季節の変わり目に悪化しやすい」ため、半年以上様子を見た後、最終的にプラスチック、セラミックなどの詰め物やかぶせ、金属を用いない義歯に替える。ただしパッチテストは保険適用だが、原因除去療法(一部除く)や金属元素分析は自費診療。

 抗原が特定できない場合は対症療法となる。炎症を抑えるためステロイド軟こう、非ステロイド軟こうの塗り薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬といった飲み薬を使用する。また、口腔内の専門的な清掃で、症状がほぼ消失する例もある。

 「国内の歯科材料は欧米に比べ、保険が使えることもあって金属が多用され、歯科金属アレルギーは国民病ともいえる。使用頻度が高いほど症状が出てくるため、今後も患者は増えそう」と指摘。「合金成分が分かっていれば元素分析の必要がなく、治療にはかかりつけ歯科医との連携も大切」と話す。

 岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)歯科金属アレルギー外来の新患受け付けは月〜金曜日の午前8時半〜11時。補綴科(クラウンブリッジ)は月、木曜日と第1、第3金曜日の同時間帯を担当。問い合わせは総合診断室(予診室、086―235―6816)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年04月18日 更新)

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