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病院内の携帯使用 広がる解禁の動き 患者サービス向上 安全性検証、エリア限定

個室で携帯電話を使う患者ら。院内で使用を認める病院が増えている=国立病院機構岡山医療センター

 電波による医用機器誤作動の恐れから、ここ10年ほど禁止されてきた病院内での携帯電話の使用。これを認める動きがおよそ1年前から岡山県内で広がりだした。患者サービス向上を狙いに、実地検証などで安全性を確認、エリアを指定して解禁している。患者には「家族らと連絡が取りやすくなった」と好評。解禁を検討中の病院もあり、今後増えそうな状況だ。

 国立病院機構岡山医療センター(岡山市)は昨年二月、集中治療室や手術室、救急室などを除く大部分で解禁した。持ち込む際はマナーモード。病室は原則禁止だが、点滴装置などの機器を入れていない個室や、大部屋でも移動が難しい寝たきり状態の患者は許可するケースがある。

 「急なけが・病気の連絡のほか、入院のストレスを家族や友人との会話で解消してもらうのも目的」と同病院環境整備委員長の後藤隆文医師。長男優太ちゃん(1つ)の入院に付き添う母・赤木晴美さん(32)=福山市=は「子どもが小さく離れられないので、とても助かる。優太も夫や祖父母の声を聞くのを楽しみにしている」と話す。

 岡山済生会総合(岡山市)、岡山大(同)、津山中央(津山市)などでも一昨年から昨年にかけ、場所を決めて使用できるようにした。現在は全館禁止の岡山赤十字(岡山市)や川崎医科大付属(倉敷市)も使用を認める方向で検討する予定。

 解禁に当たり、岡山医療センターなどはペースメーカーや輸液ポンプ、人工呼吸器など使用している機器に対する影響を実際に調査。極端に近づけなければ誤作動はないことを確かめた。岡山大は医用機器メーカー約三十社からデータを取り寄せ安全と判断。「全国的にも事故の報告はなく、使用エリアが守られればまず問題はない」と同病院医療安全管理部長の太田吉夫教授は話す。

 各病院が気にかけるのは安全面より、むしろマナーの問題だ。今のところ、どこも目立ったトラブルはないが、着信音が鳴ったり大声での使用も一部で見られるという。禁止を続ける心臓病センター榊原(岡山市)や倉敷中央(倉敷市)は「他の患者への迷惑」を主な理由に挙げる。

 岡山済生会総合の高橋輝雄事務部長は「気持ちよく過ごしてもらうため、マナーを守って使用を」と呼び掛ける。


岡山県内の主な病院の携帯電話解禁状況

国立病院機構
    岡山医療センター(岡山市)解禁(禁止エリアあり)
岡山済生会総合病院   ( 同 )解禁(   〃   )
岡山大病院       ( 同 )解禁(   〃   )
心臓病センター榊原病院 ( 同 )禁止
岡山赤十字病院     ( 同 )禁止(解禁に向け検討)
川崎医科大付属病院   (倉敷市)禁止(解禁に向け検討)
倉敷中央病院      ( 同 )禁止
津山中央病院      (津山市)解禁(禁止エリアあり)


ズーム

 病院での携帯電話の使用 一九九〇年代半ばに電波による医用機器誤作動が疑われる事例が報告され、ほとんどの施設で禁止されてきた。国などは安全性に関する調査を行い、九七年に「使用に関する指針」を作成。これらをもとに二〇〇三年秋、九州大病院(福岡市)が解禁し、以後全国に広がっている。禁止施設では、職員の連絡用に限り電波の弱い医療用PHSを使っているケースが多い。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年02月07日 更新)

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