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糖尿病性腎症 関与のタンパク質発見 岡山大大学院研究グループ 新薬開発に期待

四方賢一講師

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の四方賢一講師=腎(じん)・免疫・内分泌代謝内科学、槇野博史教授=らの研究グループは、糖尿病三大合併症の一つで、急増している「糖尿病性腎症」の発症に、人体に炎症をもたらすタンパク質が関与していることを突き止めた。同腎症には有効な治療法が確立されておらず、進行の予測や治療薬開発につながる成果として注目される。


 岡山大と岡山済生会総合病院内科の中村明彦医師らとの共同研究。米糖尿病学会誌で発表した。

 四方講師らはこれまでの遺伝子操作による動物実験で、糖尿病にしたマウスのうち炎症をもたらすあるタンパク質を持つマウスで腎症が進行し、持たないものでは進行しないことを確認。同様の働きをする別のタンパク質「インターロイキン18(IL―18)」が、関節リウマチなどの炎症性疾患患者の血液中では増加するのに着目し、糖尿病患者で実際に測定した。

 その結果、糖尿病性腎症の患者は、発症前より「IL―18」が一・五倍になり、症状の進行に応じて増えていくことが分かった。さらに、糖尿病マウスにリウマチなどに使う抗炎症薬を投与すると、腎症の進行が止まることも判明した。

 糖尿病性腎症は一度発症すると完治が難しく、腎症が原因で人工透析が必要になる人は年間約一万四千人に上る。早期診断が重要になるが、現在主流の尿中のタンパク質やアルブミンという物質を測定する診断方法では、検出した時点で既に病状が進行している場合があるという。

 四方講師は「アルブミン尿が増える半年前にはIL―18が増えるという研究結果もあり、腎症の進行を早期に予測できるマーカー(指標)になりうる。炎症を抑えることで腎症を治療できる可能性も示され、今後はヒトに対する臨床研究を進めたい」と話している。


意義ある成果

 守屋達美北里大助教授(内分泌代謝内科)の話 炎症に着眼した点は素晴らしい。検査法確立や治療薬開発につながる可能性があり、診断、治療両面で非常に意義のある研究成果だ。患者にとって朗報になるだろう。


ズーム
 糖尿病性腎症 血液をろ過して尿をつくる「糸球体」が硬くなって老廃物が処理できなくなり、最終的に腎不全を引き起こす。しびれや知覚まひなどが起きる神経障害、網膜症とともに、糖尿病三大合併症の一つ。約740万人と急増する糖尿病患者の30~40%に発症するとされる。治療は血糖、血圧、コレステロールなどをコントロールしていくが、進行すれば人工透析が必要となる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年02月07日 更新)

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