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水分補給「ペットボトル症候群」に注意 岡山市民病院・羽井佐医師に聞く

羽井佐茂医師

 冷たい飲み物が手放せないこの季節。水分補給は熱中症対策としても欠かせないが、糖分を多く含んだ清涼飲料水の飲み過ぎは、急激に血糖値が上がって糖尿病症状を引き起こす「ペットボトル症候群」の危険性をはらむ。病気に詳しい岡山市民病院内科部長で糖尿病センター長の羽井佐茂医師(58)は「認知度は低いが、世代に関係なく発症の恐れがある現代病」と警鐘を鳴らしている。

 清涼飲料水に含まれるブドウ糖を中心とした単純糖質は吸収されやすく、飲むと血糖値が上昇。高血糖になると喉が渇き、また飲む―という悪循環が形成され、同症候群にかかるという。

 自覚症状は、喉が渇く▽体がだるい▽食べても痩せる―など。気付くのが遅れると高度の脱水から肺閉塞へいそくや急性腎不全を起こし、死に至ることもある。

 清涼飲料水の糖質濃度は、炭酸やコーヒー飲料で約10%、スポーツドリンクでも5〜6%含まれる。「カロリーオフ」表示の商品も出回っているが、羽井佐医師は「100ミリリットル当たり20キロカロリー以下で記載でき、まったく糖質がゼロではない」と指摘する。

 羽井佐医師が診察した20代男性は肥満気味で、発症する3カ月前からペットボトル(1・5リットル)の清涼飲料水を1日2本飲んでいた。運動する習慣がまったくなかった30代男性もたくさんの炭酸飲料を飲み続け、2カ月で10キロも痩せてしまったという。

 同症候群は、コンビニや自動販売機が普及し、ペットボトルの清涼飲料水が身近になった1980年代半ばから報告され始めたとされる。患者は10〜40代の男性が多く、肥満だったり、糖尿病の家族歴があったりする人は注意が必要だ。

 年に数人は患者を診ている羽井佐医師は「ペットボトルが日常にあふれる中、夏場に限らず冬でも患者が出ている」と懸念。予防には「清涼飲料水の糖質濃度をチェックする習慣を身に付けてほしい。熱中症対策には塩分を補給しつつ、糖分を含まないお茶や水で水分を取り、スポーツドリンクは2倍に薄めて飲んで」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年07月26日 更新)

タグ: 脳・神経子供

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