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外科矯正 かみ合わせや口元が改善

顎矯正手術症例の年齢分布

顎変形症治療による変化

にしやま・あきよし 倉敷天城高、広島大歯学部卒。倉敷広済病院歯科医長、赤穂中央病院(兵庫県赤穂市)歯科口腔外科医長、岡山大歯学部助手などを経て、2004年から現職。神戸市出身。51歳。

 顎の変形に伴い、歯のかみ合わせがずれ、顔面にゆがみを来す顎がく変形症。「通常は小学高学年から症状が顕著化し、成長の止まる10代後半以降に行うのが顎矯正手術。60代でも施術でき、かみ合わせや口元が改善される」と、岡山大学病院口腔こうくう外科(病態系)の西山明慶講師は語る。

 顎変形症は、顎骨の大きさ、形態、位置の異常により、下顎前突ぜんとつ(受け口)、上顎前突(出っ歯)、前歯が開いた開咬かいこうなどを招く。そしゃく障害や顎関節症を併発しやすく「顔のコンプレックスから引っ込み思案になり、下顎が小さいと睡眠時無呼吸症候群になるリスクも高い」。

 顎変形症は原因不明なものが多く、顎骨がアンバランスに成長した結果、小学高学年からの成長期に顕著となる。幼児期の手術、先天的疾患、交通事故による外傷のほか「指しゃぶりの癖やおしゃぶりの常用、口呼吸などが原因となることもある」と話す。

 症状が軽度の場合、「インプラントアンカー」を用いた歯列矯正のみで治療は可能。だが、変形やずれが大きいときは顎矯正手術が必要になり、矯正歯科医と連携し歯列矯正、手術を行う。

 手術は全身麻酔をし上・下顎骨を医療器具で切り、位置や大きさを修正する。チタン製プレートなどで骨を固定するが、変形が大きい症例では特殊な装置を装着し、骨を1日1ミリずつ伸ばす骨延長術を行うこともある。

 手術時間は下顎だけなら2〜3時間、上下顎で複雑な症例では5〜6時間。約2週間で退院できる。「手術は原則、口腔内から行い、顔にメスを入れることはない。上顎骨は周辺に血管、神経が走り難度が高い」という。

 手術はエックス線や顔、口腔の診査から適応か否か判断。CT(コンピューター断層撮影)データを元に、顎骨の実態模型を作り、綿密な計画を立てて行う。術前には1〜2年かけ、第三大臼歯(親知らず)を抜くなど歯列を矯正。退院後3カ月は、新しいかみ合わせに順応し後戻りを防ぐため、かむ訓練を通院で重ねる。術後半年〜2年ほど、かみ合わせを微調整する歯科矯正を経て、術後5年程度、経過観察する。

 同病院口腔外科(病態系)では、1984年度に顎矯正手術を始め、2010年度までで計763例を数える=グラフ参照。同手術は時に輸血が必要とされるが05年度以降、輸血なく毎年60例以上を施行し「西日本有数の実績」を誇る。「顎口腔機能診断施設」の認定を受けており、外科矯正に伴う入院・手術、歯科矯正費には保険が使える。

 日本人は受け口が多く、同科でも症例の約7割を占める。患者は女性が男性の倍以上で、近年は中高年も増加しており「顎変形症を疑ったら矯正歯科や口腔外科に相談を」と呼び掛ける。

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 岡山大学病院(岡山市北区鹿田町)口腔外科(病態系)の新患受け付けは火、木曜日と第2、第4金曜日の午前8時半〜11時半。問い合わせは同科(086―235―6798)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年08月01日 更新)

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