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「ACTおかやま」1年 孤立患者らに成果 治療拒否対応や長期入院回避 岡山県の精神障害者支援

ACTの効果や課題を話し合った研修会=岡山市

 精神障害者が地域で生活できるようにする米国発祥の包括的支援システム「ACT(アクト)」を岡山県が始めてもうすぐ1年。医療も含めた生活支援を24時間対応で行うことにより長期入院を防ぐ効果が期待される。関連機関との連携など課題もあるが、入院期間の短縮や地域で孤立した患者への援助に成果が表れている。

 「ACTおかやま」事業として、二〇〇五年四月から県精神保健福祉センター(岡山市古京町)内に精神保健福祉士や保健師、精神科医ら多職種の八人でチームをつくり、活動開始。これまで十二人(男六、女六)の患者の支援を行ってきた。

 対象は、すべて統合失調症で、対人関係にトラブルを抱えやすいなど生活にさまざまな支障がある重度の患者。通報などの緊急時のほか、本人が治療を拒否するなど保健所で対応に苦慮しているケース、精神科病院の入院患者などにかかわった。

 患者は社会的に孤立していることが多い。ACT導入前、保健所や作業所など地域の支援機関とのかかわりは一人平均一・八カ所しかなかったが、導入後は同三・九カ所に増加。また、本人の生活能力の評価尺度(GAF)の値も改善した。

 ある一人暮らしの高齢の女性の場合、状態が悪化し入院したところで、ACTチームが介入。病院に出向き、ケア会議を開くとともに、女性の自宅の片づけをしたり、退院後の往診、生活支援をACTが全面的に請け負うことで二カ月で退院できた。

 一方、改善すべき課題もある。一月下旬に岡山市内で開かれたACTの研修会では、出席した保健所の担当者から「システムをよく理解していない段階で現場で『この患者はACTに』と言われ困惑した。ケア会議を開くなどして考え方を共有する必要があるのでは」と、関係者への周知徹底を望む声が出た。また、「このシステムを活用できれば入院を回避できたのではないかという患者が何人かいる」など、活動の広がりの必要性を指摘する意見もあった。

 ACTメンバーの藤田大輔医師(県精神保健福祉センター)は「これまでなかったシステムなので、医療機関や保健所との連携方法などで試行錯誤している。課題を整理し、定着できるようにしていきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年02月10日 更新)

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