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胃がん新治療法・ESD 岡山大病院光学医療診療部・河原祥朗医師に聞く 内視鏡で一括切除

内視鏡的粘膜下層剥離術を行う河原医師

 胃がんの新しい治療法として内視鏡の先端から特殊な電気メスを使って切除する内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)が普及している。しかし、偶発事故もあり、学会で議論されている。岡山大病院(岡山市鹿田町)光学医療診療部の河原祥朗医師に聞いた。

 ―具体的な治療法は。

 胃の粘膜に発生したがん病巣を内視鏡の先端から電気メスを出し、切開し、剥離してはぎ取る。これまでは円形のワイヤでがん病巣を囲み電流を通して焼き切っていたが、大きな病変は分割切除になり、がん病巣の取り残し、再発などの欠点があった。二〇〇一年、IT(絶縁材付き)ナイフが開発され、がん病巣の深さまで切開し、病巣の範囲に合わせて剥離してはぎ取ることで、大きく一括切除が可能になり、この治療法が広まった。

 ―治療対象は。

 がん病巣が胃壁の粘膜層にとどまる早期がんで、七~十センチの大きさでも切除できる。これまで開腹手術して切り取っていたのが、内視鏡で根治術としてできるようになり、利点は大きい。患者さんにとって、入院日数も短く、社会復帰も早い。

 ―しかし、問題点も指摘されている。

 まず、治療を行うには高度な技術が必要だ。治療実績を積むなど経験が必要。胃壁に孔(あな)をあけたり、出血させたりという偶発事故が起きることがある。胃壁は五~十ミリほどだが、その内側二~三ミリを切開、剥離するので、ナイフを上手に操作することが求められる。外側にある筋層へナイフが行くと、孔が開く。最近は私たちが考案した剥離時に筋層側を絶縁するナイフが開発されたり、孔があいた場合はクリップでふさぎ、出血対策として出血点を把握して凝固処置をとるなど治療も進み、安全確保へ前進している。ただ、まだ課題は残っている。学会では治療経験の豊富な熟練した医師のいる治療施設に限り認めるなどの意見も出ている。

 ―患者への事前の説明と同意も大切だ。

 事前に患者さんに十分な説明をし、開腹手術と比べた場合の利点、欠点などをすべて納得されて、この治療を受けるべきだ。

 ―岡山大病院の光学医療診療部はいつ開設されたか。

 〇三年、中央検査部内視鏡室から独立し設置された。内視鏡を使った診断、治療を行う部門で、食道、胃、大腸、胆管、膵(すい)臓などの消化器領域を中心に診療を行っている。特に、ESDに関しては全国でもトップレベルの実績を挙げている。

 ―河原先生の治療実績は。

 〇一年当時勤務していた津山中央病院で始め、これまで胃三百五十例。ケースにもよるが、治療時間は三十分から一時間ぐらい。がん病巣が大きい場合は二~三時間かかることもある。最近は、この治療法で食道、大腸のがんも切除している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年02月14日 更新)

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