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酢酸の効用 肥満、2型糖尿病を予防

大さじ3杯強(50ミリリットル)の食酢を5倍希釈して飲むのが1日の適量

酢酸についての研究成果を語る山下教授

 食酢の主成分は酢酸で、4〜5%含まれている。その酢酸の効用について、岡山県立大(総社市窪木)保健福祉学部栄養学科の山下広美教授=食品栄養学=に聞いた。山下教授は2004年から08年にかけて行った動物実験とヒト試験で、肥満と2型糖尿病を予防する作用を確認した。

□ 酢酸は、体内では脂肪酸から生成され、空腹時のエネルギー源になる。一方、酢酸を食べ物として体外から取り入れた場合は「AMPキナーゼという体内のタンパク質が活性化し、脂肪代謝が促進されます」と、山下教授は酢酸の働きについて語る。

 動物実験では、どんどん過食して人間と同じように肥満と2型糖尿病を発症する病態モデル動物(生後5週齢のOLETFラット)を用いた。同ラットを2群に分けて毎日定刻に、片方に水を、もう一方には1%酢酸溶液を与えた。その結果、酢酸を与えた群は、水を与えた群に比べて体重増加が抑えられ、内臓脂肪の蓄積量も抑制された。

 また、生後30週齢になった同ラットで経口ブドウ糖負荷試験を行い、糖を摂取した直後から2時間後までの血糖値の変動を調べた。酢酸を与えた群は、水を与えた群に比べて耐糖能(上昇した血糖値を正常に戻す能力)が改善された。

 ヒト試験は計3回行った。初回は公募した30代から60代の男女43人(健常者)を対象とした。43人をA、Bの2グループに分け、食事制限はせず毎日夕食後、Aグループに1%の酢酸を含んだ試験飲料を、Bグループには酢酸の代わりに乳酸を含んだ対象飲料を1カ月間ずつ飲んでもらった。試験飲料は、食酢50ミリリットル(大さじ3杯強)を5倍希釈したコップ1杯分(250ミリリットル)だった。

 その後、3週間置いて今度は逆にBグループに試験飲料を、Aグループに対象飲料を1カ月ずつ飲んでもらった。試験中、体重測定を毎日行った。酢酸入り試験飲料を飲んだグループは、対象飲料のグループに比べて体重増加が抑制され、平均で約0・6キロ減となった。

 2回目は「太めの体が気になる」という男女15人に試験飲料を1カ月間飲んでもらい、体重と腹囲を測った。体重増加が抑制され、腹囲は平均約1センチ減、最も減った人は約5センチ減だった。

 3回目は病院の協力を得て、糖尿病予備群の「境界型」と判定された男女10人に試験飲料を1カ月間飲んでもらった。体重増加が抑制され、血液検査の結果、ヘモグロビンA1cやグリコアルブミン値が低下。肥満を危険因子とする2型糖尿病を予防・改善する可能性が強く示唆されたという。

 山下教授は「1日50ミリリットル程度の食酢を5倍程度に希釈、夕食後30分から2時間の間に摂取すると効果がある。体内で脂肪の合成が非常に高まる時間帯だからです」と説明。「スポーツ飲料やトマトジュースで割ると酸っぱさが緩和されて飲みやすい」と助言もする。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年09月05日 更新)

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