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(1)下肢静脈瘤―血管内治療を受けてきれいで元気な足を取り戻そう 笠岡第一病院血管外科部長 松前大

松前大氏

 われわれはカテーテルという治療用の細い管を使って手術を行っています。これを血管内治療といいます。血管内治療は局所麻酔下にカテーテルを血管の中に挿入して行う体に優しい手術方法です。

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 <下肢の静脈>

 下肢の静脈では足先から心臓へ向かって血液が返っていきます。下肢の主な静脈は深部静脈と伏在静脈です。

 深部静脈は骨に近いところ、文字通り深いところを走行する太い静脈です。この静脈に血栓ができると、いわゆるエコノミークラス症候群という状態になります。

 伏在静脈は皮膚に近いところを走行し大伏在静脈と小伏在静脈に分けられます。大伏在静脈は下肢の内側を走行し、足の付け根で深部静脈に合流します。小伏在静脈はふくらはぎを走行し、膝の後ろで深部静脈に合流します。

 <下肢静脈瘤(りゅう)の症状>

 *下肢の静脈が膨れる
 *下肢がだるい、腫れる、こむら返り
 *色素沈着、かゆみ(うっ滞性皮膚炎)

 進行すると歩行が困難になったり、皮膚炎や傷ができたり、エコノミークラス症候群を合併することがあります。

 <原因>

 静脈には逆流を防ぐ弁がありますが、この弁に障害が起こると、立った時に逆流が起こります。下肢静脈瘤では伏在静脈という下肢の表面近くを走行する長い静脈に逆流が起こり、その結果静脈が膨れて静脈瘤になります。逆流を繰り返しているうちに、うっ滞性皮膚炎が合併してきます。

 <治療>

 治療は伏在静脈の逆流を止めることです。そのために静脈の血流を遮断します。10年くらい前までは、この逆流している伏在静脈を引き抜く手術が一般的でした。現在では小さい傷でカテーテルを血管の中に挿入し、血管の中から焼灼(しょうしゃく)したり、医療用接着剤を注入して、静脈の血流を遮断する血管内治療が標準治療になっています。

 <血管内焼灼術、血管内塞栓術>

 先端からレーザー光線がでる細い管を逆流のある伏在静脈に挿入して、血管の中から焼灼して静脈を閉塞させ、血流を遮断します。

 また医療用接着剤を注入する血管内塞栓術も当院では行うことができます。どちらも局所麻酔で行うことができ、術後すぐに歩くことができます。特に血管内塞栓術ではほとんど局所麻酔を必要としません。日帰りないしは1泊2日入院です。当院でもこの3年間でおよそ300回の血管内治療を行いました。

     ◇

 笠岡第一病院(0865―67―0211)

 まつまえ・まさる 岡山大学医学部卒業。米国メディカルセンターオブデラウェア心臓血管外科部門、岡山市立市民病院外科などを経て、2019年から笠岡第一病院血管外科。

【参考】
笠岡第一病院「げんき通信」

笠岡第一病院「おうちで健康教室」
(1)下肢静脈瘤って思ったら?~自己チェックしてみましょう~
(2)下肢静脈瘤に対する体に優しい治療
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年12月20日 更新)

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