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「がんの苦痛、我慢しないで」緩和ケアの普及図る 岡山・野の花プロジェクト

「メディカルカフェ」で緩和ケアの重要性を訴える松岡教授=9月11日、真庭市内

 がんになることで生じる苦痛を和らげるための「緩和ケア」。その岡山県での普及を目指す「野の花プロジェクト」をご存じだろうか。2009年にスタートして以降、医師らが各地に出向いて講演を重ねたり、公開講座を開くなど、緩和ケアへの社会的な理解を広め、患者や家族のQOL(生活の質)向上につなげようと地道に活動を続けている。

 プロジェクトは岡山大大学院医歯薬学総合研究科 緩和医療学講座の 松岡順治教授を代表に、医療・福祉関係者や患者ら約30人が中核。緩和ケアに関しては、WHO(世界保健機関)が1986年に疼痛(とうつう)治療 指針を発表、モルヒネなどの 鎮痛薬を適切に用いれば 痛みの9割はとれるとされており、松岡教授は「本来はがん治療の初期段階から並行して行うべき」と指摘する。

 ただ、日本ではもっぱらがん治療のみが重視され、患者側にも「緩和ケアはがんの終末期に受けるもの」「モルヒネを使うと中毒になって死んでしまう」といった誤解があって十分に広がっていないのが現状。医師や看護師への遠慮から、うまく痛みを伝えられない患者も少なくない。

 そのため、プロジェクトではこれまでに、町内会をはじめとした各種団体の集まりなどに出向いて 計50回に上るミニ講演会を開催し、3000人近い参加者にこれらの誤解を解くとともに、緩和ケアの 必要性を説明。さらに、がん治療の最新情報なども交えて、医師や看護師らが話す「メディカルカフェ」を計5回、有名人らを招いた市民公開講座も年1回のペースで手掛けてきた。16日にも岡山市内で3回目の市民公開講座を予定する。

 このほか、患者が医師らに痛みを正確に伝えられるよう、ホームページ(http://nonohana−okayama.org/)などを通じて、その日の痛みの強さなどを記入する「痛み日記」を配布している。

 「痛みをコントロールすることで、がんになってもより自分らしい生活を送れる。本当の痛みは患者さん本人にしか分からず、しっかりと声を上げてほしい」と松岡教授。緩和ケアには現在、肉体的・精神的な側面だけでなく、社会的な側面なども含めた総合的なサポートが求められており、「今後も草の根で啓発を図り、さまざまな立場の医療従事者はもとより、地域全体で患者や家族を支える社会の実現につなげたい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月03日 更新)

タグ: がん岡山大学病院

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