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前立腺がん(倉敷中央病院) 手術(前立腺全摘除術) 切開小さくし、より低侵襲に

倉敷中央病院での開腹手術。通常よりも切開部分が小さく低侵襲だ=同病院提供

岡山県内がん診療連携拠点病院の前立腺がん治療実績

寺井章人泌尿器科主任部長

 前立腺がん特集の後編は、豊富な治療実績を誇る倉敷中央病院(倉敷市美和)の手術と放射線治療を紹介。併せて、早期発見に有用とされるPSA検査について岡山中央病院(岡山市北区伊島北町)で聞いた。


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 前立腺と精嚢(せいのう)、周辺のリンパ節を取り除き、あらためて膀胱(ぼうこう)と尿道をつなぎ合わせる―というのが大まかな内容。対象となるのは主にがんが前立腺内にとどまっているケースで、高齢(75歳が一つの目安)や合併症のある患者は適応とならない場合もある。

 手術のやり方には従来の開腹手術のほか、下腹部に小さな穴を数カ所開け、そこからカメラや器具を入れてモニターを見ながら行う腹腔(ふくくう)鏡手術があり、最近では手術用ロボットを操作して行う方法も登場している。

 倉敷中央病院は手術実績が全国でも上位に位置し、昨年は91例を数える。手掛けるのは全て開腹手術だが、切開するのは5〜6センチのみと通常(10センチ程度)の半分ほど。「小さければ患者さんの負担が抑えられ、回復も早い。跡も目立ちにくい」と、泌尿器科の寺井章人主任部長が豊富な経験と高度な技術力を基に工夫を重ね、より低侵襲な開腹手術を追求、実現した。

 標準的な手術時間はおおむね2時間半から3時間程度。術後は排尿のため尿道にカテーテル(細い管)を挿入、5日目にそれを抜いた後、6日目には退院できるという。

 また、より正確な病巣の位置や広がりを把握するため、前立腺がんが疑われる全ての患者に対し、生検(組織検査)前のMRI(磁気共鳴画像装置)診断を徹底。“ターゲット”を見逃すことなく、生検の精度向上にもつなげている。

 手術に伴う主な合併症はED(勃起不全)と尿漏れ。同病院の場合、性機能温存を希望する患者には、術中に勃起神経に電気刺激を与えて反応を確認しながら、その部分を傷つけないよう確実に残すという方法を採る。半面、温存することでがんを取り損なう可能性もあり、進行度や悪性度によっては難しい。

 尿漏れは手術直後にはほとんどの患者に起こるが、「徐々に改善し、長くても半年以内にはほぼなくなる」と寺井主任部長。ただ、「手術で尿道が短くなることに加え、手術後何年もたつと加齢による膀胱・尿道機能の衰えが進むので、漏れやすくなる人はいる。これも小さな尿漏れパッドや薬で十分対応でき、日常生活に支障を来すようなものではない」と説明する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月17日 更新)

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