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前立腺がん(岡山中央病院) PSA検査 50歳過ぎたら測定を

前立腺がんやPSA値について説明する入江伸泌尿器科部長

 近年、患者が急増した背景には、天皇陛下が前立腺がんで手術を受けられた(2003年)のを機に、高感度な腫瘍マーカー検査の認知度が一気に高まったこともある。それが「PSA検査」だ。PSAは前立腺特異抗原と呼ばれるタンパク質の一種で、前立腺に異常があれば血液中に増える。検査はわずかな血を採るだけで済み、人間ドックや健診などでも希望すれば測定してもらえる。

 「前立腺肥大症や前立腺炎でも数値が高くなったり、発見されたのが生命に影響を与えないようながんでは過剰治療につながる懸念があるなど、デメリットも指摘されるが、前立腺がんは初期症状がないため、早期発見の大きなきっかけになることは間違いない」と岡山中央病院の入江伸泌尿器科部長。

 入江部長らが岡山市の前立腺がん検診受診者(03〜07年)を対象に集計したところ、1ミリリットル中のPSA値(単位は全てナノグラム=ナノは10億分の1)が4・1〜10・0だった人の約4割、10・1〜20・0の約6割、20・1〜50・0では9割超がその後の生検で「陽性」に。一方で、見つかったがんの約8割は限局がんだった。

 PSA値は一般に4・0以下が基準値となるが、まれにそれ以下でも存在するがんがある。そのため入江部長は「見逃しを減らすよう、50代で2・0、60代で3・0、70代で4・0を上回ったら、念のためにより詳しい検査を受けた方が良いと考えている」。同時に、継続測定して値の変化を確認することも重要といい、「例え基準値以下でも、1年で1・5〜2倍に増加し、かつ2を超えるようなら、がんの可能性も疑われる」と指摘する。

 今や「がんが前立腺内にとどまっていれば、治療後10年以内に亡くなる確率は限りなくゼロに近い」(入江部長)という前立腺がん。ただ、進行して骨などに転移した後では、他のがんに比べて予後が良いとはいえ、多くの人が数年で亡くなるのも事実。入江部長はPSA検査のメリット・デメリットに対する理解を求めた上で「50歳を過ぎたら一度は検査を。リスクの一つには遺伝的要因が挙げられており、家族に患者がいる人は50歳までには測定することが望ましい」と呼び掛ける。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月17日 更新)

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