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“国民病”2型糖尿病 日本食、運動で改善 岡山の岡田医師 薬使わず初実証

 おかだ・そうじ 岡山大医学部卒。ドイツ・ギーセン大医学部への国費留学、岡山大医学部講師、兵庫県の相生市民病院長などを経て、1997年開業し現職。美作市出身。68歳。著書に「糖尿病とうまく付き合う」(大阪書籍)など。

 糖尿病専門の岡田メディカルクリニック(岡山市北区伊福町)の岡田奏二院長は、日本人に多い2型糖尿病を薬を使わず、日本食を重視した食事療法、運動療法で改善させる臨床研究をまとめた。基礎教育をした通院患者の肥満度、血糖値などを半年間調べ、有効性をデータで初めて実証。「生活習慣を修正するだけで、薬に過度に頼らず国民病をコントロールできる」(同院長)として、患者の注目を集めそうだ。

 調査対象は1997〜2005年、外来で訪れた未治療の2型糖尿病患者92人(重症者除く)。

 岡田院長は通院初期、患者に発症の仕組み、尿量が多く喉が渇く症状や、食事療法、運動療法で病態を改善し、糖尿病腎症、脳梗塞といった合併症を防止できることを教育。両療法のポイントを伝え、日本食中心に生活習慣を変えてもらい、当初と3、6カ月後のヘモグロビンA1c、インスリンの効き具合を示すインスリン抵抗性指数、中性脂肪値など、動脈硬化の危険因子8項目について調べた。

 両療法のポイント=表1参照=は、食事が野菜、海藻、キノコ類を増やす▽タンパク質は肉より大豆、魚から、脂質は動物性より植物性脂肪から取る―など。運動は毎日3キロを30分で歩くよう促し、月1回の通院時に実践状況をチェックした。

 肥満の判定指標となるBMI(体格指数)が当初25以上の43人を肥満群、25未満の49人を非肥満群と分けて解析した結果、ともに各種数値がほとんど改善。過去1〜2カ月の平均的な血糖値を示すヘモグロビンA1c(基準値4・3〜5・8%)は、BMI値の低下(体重減少)に合わせ、肥満群が3カ月後に平均6・5%(当初比2・5ポイント減)、非肥満群が同6・9%(同1・8ポイント減)に下がった=表2参照。

 食事療法、運動療法は、薬物療法とともに糖尿病治療の基本。だが薬物療法に比べ、有効性を裏付ける臨床データはこれまでなく、研究成果は9月6日付の英専門誌電子版に掲載された。

 糖尿病を40年以上研究している岡田院長は「糖尿病は生活習慣を改善しないまま薬物療法を受けると必ず太り、低血糖が起きる」とし、「自己管理に必要な知識を教え、患者が日本食中心の食事療法、運動療法を続ければ、そうした副作用を防げる。2型糖尿病のみならず、動脈硬化の危険因子も改善するモデルを示せた」と話している。

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 2型糖尿病 膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモン・インスリンの量や作用が不十分になり、血糖値が高くなる。遺伝的要因に過食、運動不足、肥満、ストレスや加齢が加わり発症する。わが国の糖尿病の95%以上を占める。膵臓でインスリンを作る細胞が破壊される1型糖尿病、妊娠糖尿病などと区別される。糖尿病の日本人は2007年時点で、その可能性がある予備群を含めると推計2210万人に上る。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年10月17日 更新)

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