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認知症患者と家族を支援 岡山赤十字病院に開設の疾患医療センター 認知症の診断・治療 アルツハイマー型が半数 薬3種増え、治療の選択肢広がる

認知症患者を診察する中島誠センター長

正常な老化とアルツハイマー型認知症の大脳MRI画像

脳の仕組み

 岡山赤十字病院(岡山市北区青江)に10月、岡山市認知症疾患医療センターが同市の委託を受け開設された。センター長の中島誠同病院精神科部長に、認知症の症状・診断・治療や同センターの機能について尋ねた。

 高齢社会に伴って増え、国内患者は200万人以上とされる認知症。その大半は脳疾患でアルツハイマー型認知症(AD)が代表的だが「他にもさまざまなタイプがあり早期診断、治療が重要」と中島センター長は語る。

 認知症は、正常に発達した知能が病気や障害で持続的に低下した状態。大脳の広範囲に老人斑(しみ)ができ、神経細胞が変性するADが原因疾患の約半数を占める。神経細胞に異常なタンパクの固まりが現れるレビー小体病、前頭・側頭葉が萎縮するピック病のほか、脳卒中なども引き金となる。

 記憶障害、失語、判断力低下といった中核症状と、これらに起因する妄想、抑うつ、徘徊はいかい、不眠などの周辺症状がある。「中核症状は直近のことを忘れたり、日時や場所が分からなくなったりし、周辺症状は家族を困らせる」と説明する。

 診察では病歴や症状を問診し、ミニメンタルテスト、改訂長谷川式簡易知能評価スケール、前頭葉機能検査FABを実施。「検査でヒントをあげても言葉を思い出せない場合、AD予備軍の軽度認知機能障害を疑う。ピック病に代表される前頭側頭型は、記憶障害より先に性格変化が現れる」という。

 さらにMRI(磁気共鳴画像装置)、CT(コンピューター断層撮影)検査、脳の血流を画像化し機能低下の様子を調べる「脳血流シンチ」などを組み合わせ、確定診断を下す。「ADは頭頂・側頭葉の血流低下が顕著で、記憶に関わる海馬の萎縮が見られる。脳血管性認知症では、血流が広い範囲で低下しているのが典型的」だ。

 ADと診断されれば薬で治療する。死滅した神経細胞は元に戻らず、根治薬はないが、進行を遅らせる効果がある。国内では「塩酸ドネペジル」しか認められていなかったが、今年3種類が加わり選択肢が広がった。

 ドネペジルは、記憶に関わる神経伝達物質アセチルコリンを分解する酵素の働きを阻害する。同様に作用する薬が「ガランタミン」と貼り薬「リバスチグミン」。一方、「メマンチン」は、神経伝達物質グルタミン酸の受容体に作用し、神経細胞を保護する。

 対象は、ドネペジルが軽度〜高度▽ガランタミンとリバスチグミンが軽度〜中等度▽メマンチンが中等度〜高度の患者。メマンチン以外はいずれか1種類を使うことになるが、メマンチンとの併用はできる。周辺症状には抗精神病薬、睡眠導入薬などが用いられる。

 非薬物療法では記憶の訓練、音楽療法などがあり、中島センター長は「認知症は高血圧、糖尿病といった危険因子を背景として発症する。甲状腺機能低下症など原因疾患を治療すれば改善できるものもあり、早期に受診を」と呼び掛ける。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年11月21日 更新)

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