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血管新生や心筋修復 特定タンパク質発見  岡山大の草野助教授ら 心臓病遺伝子治療に期待

草野研吾助教授

 胎生期のヒトや動物に存在する特定のタンパク質が、心臓の血管を作り出したり心筋を修復する働きを持つことを、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の草野研吾助教授(40)=循環器内科学=らの研究グループが世界で初めて突き止めた。動物実験で心臓病治療に成功しており、心筋梗塞(こうそく)、狭心症などに対する新たな遺伝子治療につながる成果として、米医学誌ネイチャーメディシンで発表した。

 「ソニック・ヘッジホッグ」といわれるタンパク質。肺や骨、中枢神経を形成する重要な働きが分かっているが、成体(大人)では確認されていなかった。

 草野助教授は米タフツ大と共同研究。成体のマウスとラットの心臓からもソニック・ヘッジホッグを初めて発見した。さらに、冠動脈が詰まる虚血性心疾患のマウスとラットでソニック・ヘッジホッグを過剰に増やし、効果を調べた。

 その結果、慢性、急性虚血性心疾患とも二週間目から虚血部分に血が通い始め、四週間後には虚血部分が四~六割縮小。太い血管が作り出され、心筋も修復されていた。心筋の過剰な細胞死(アポトーシス)を防いだり、虚血部分に、血管や心筋を作る骨髄幹細胞を集積させるとみられる。

 血管新生や心筋修復には、体内にある複数のタンパク質を活性化させる必要がある。ソニック・ヘッジホッグは、こうしたタンパク質を同時に働かせる“指令役”として機能していることも分かった。

 草野助教授は「血管をつないで血流を回復させる手術と違い、ソニック・ヘッジホッグを注入する遺伝子治療は、失われた心臓機能そのものを再生する点で臨床的意義も大きい。重症患者を対象にした治療の確立を目指し、ヒトに対する臨床試験を早期にスタートさせたい」と話している。


臨床応用も可能

 浅原孝之先端医療センター研究所副所長(再生医学)の話 今回の動物実験ほど効果を示すデータはあまりなく、素晴らしい研究成果だ。今後、ヒトに対する安全性などが確認されれば、臨床応用も十分可能だろう。


ズーム

 虚血性心疾患 心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が動脈硬化で詰まる病気。狭心症や心筋梗塞などがある。急に詰まると心筋が部分的に壊死(えし)し、最終的に心不全を引き起こす。血管を付け替えるバイパス手術や、風船などで血管を広げる心カテーテルなどが行われるが、重症患者への決定的な治療法はまだ確立されていない。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年02月27日 更新)

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