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冬は心臓病に要注意 岡山ハートクリニック 日名 一誠院長に聞く

日名一誠院長

岡山ハートクリニックで行われた心カテーテル治療

 日本人の死因でがんに次ぎ2番目に多い心臓病は、冬に多発する。特に狭心症、心筋梗塞といった虚血性心疾患は、寒さによる血管収縮などで起きやすい。岡山ハートクリニック(岡山市中区竹田)の日名一誠(かずよし)院長は「激しい温度変化は血圧の急上昇を招く。体を温めるよう心掛け、異常を感じたら早急に治療を」と呼び掛ける。

 厚生労働省の人口動態統計では、心臓病による死者は2010年18万9360人。月別の最多は1月の2万554人で、最も少ない9月1万2553人の1・6倍。以下、12月1万8837人、3月1万7343人―の順だった=グラフ参照

 中でも冬に多いのが、心臓を動かす心筋に酸素と栄養を送っている血管(冠動脈)が狭まる狭心症、詰まって心筋が壊死(えし)する心筋梗塞。動脈硬化が原因で、血管内壁にコレステロールなどが粥(かゆ)状にたまり、それが破れると血栓(血の塊)ができて血管をふさぐ。

 血管縮み血圧上昇 家庭で防寒対策を

 なぜ冬に発症が増えるのか―。「寒くなると、血管が収縮し血圧が上がる。交感神経が興奮し、血液も固まりやすくなるため」と日名院長。「高血圧、脂質異常症、糖尿病や肥満の人は動脈硬化が進んでいる恐れがあり、要注意。日頃からストレスをためないことが大事」と説く。

 虚血性心疾患を防ぐには、家庭で防寒対策に気を付ける。例えば、浴室や脱衣室、トイレは暖房器具で暖めたり、浴槽のふたを外したりし、居間との温度差を小さくする。血圧上昇を避けるため、風呂の湯温は38~40度と低めに▽入浴前後や起床時に水分補給―などもポイントに挙げる。

 発作が起きれば治療が必要となってくる。胸が締め付けられるように痛い▽みぞおち、左の肩、腕、背中、あごが痛む▽息切れがする▽冷や汗が出る―などが危険信号。特に急性心筋梗塞は命に関わり、一刻を争う。「発作から3時間以内に血流を再開させれば、心臓のダメージは極力抑えられる。前触れなく突然発症するケースも多く、異変を感じたら遠慮せず、救急車を呼んでほしい」と語る。

 同クリニックでは、急患に心カテーテル治療を行う。心電図、血液検査、超音波(エコー)検査から迅速に診断し、脚の付け根や手首の動脈から細い管・カテーテルを挿入。冠動脈まで進め、病変部で風船を膨らませて血流を回復させ、再び狭くならないようステント(金網状の筒)を広げて留め置く。

 留置前後には、先端に超音波装置の付いたカテーテルを入れる血管内超音波検査をし、病変の長さやステントの広がり具合などを確認する。治療は1時間前後、入院は狭心症が2日、心筋梗塞は1~2週間程度かかる。2010年の心カテーテル治療実績は360例で、うち357例にステントを留置した。

 冠動脈の根元などが詰まった場合、胸を切開し迂回(うかい)路を作るバイパス手術となる。同クリニックでは、開胸手術が必要な患者は川崎医大病院、岡山大学病院など岡山県内5カ所の心臓血管外科と密接に連携し加療している。

 日名院長は「心筋梗塞になる前、狭心症の段階で治療することが大切」とし「冠動脈CT(コンピューター断層撮影)検査をすれば、95%以上の正確さで血管の様子が分かる。外来でその日のうちに結果が分かるので、中高年や気になる人には勧めたい」と話す。

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 岡山ハートクリニック(電話086―271―8101)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月19日 更新)

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