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造血幹細胞移植患者 合併症改善に有効物質 岡山大病院松岡助教ら確認 国内臨床研究へ

松岡賢市助教

 岡山大病院血液・腫瘍内科の松岡賢市助教らのグループは、白血病などに伴う造血幹細胞移植後の慢性合併症・移植片対宿主病(GVHD)患者に、体内で作られるサイトカイン(タンパク質)の一種「インターロイキン2(IL2)」をごく微量投与すると、症状が改善することを米国での臨床研究で突き止めた。同内科の谷本光音教授らは国内での臨床研究の準備を進めており、早ければ今年中に着手する。 

 慢性のGVHDは造血幹細胞移植後、約半数で発症。標準的治療(ステロイド投与)が効かない場合、口腔こうくう内の乾燥や皮膚硬化、呼吸困難など重い症状が続くため、松岡助教は「早期に新たな治療法として確立、患者に希望を与えたい」とする。成果は米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」電子版に掲載された。

 松岡助教は2011年4月まで留学していた米ハーバード大付属がん研究所で臨床研究を実施した。ステロイド投与が無効な米国人患者29人に、ごく少量のIL2を8週間皮下注射。4週休み、再び投与を続けた。効果判定ができた23人のうち、12人の症状が改善したという。

 人体の免疫機能は、ウイルスなどの異物を攻撃するリンパ球内の「T細胞」と、攻撃を沈静化する「制御性T細胞」がIL2と結合して担う。移植で他人の臓器が入ると、GVHDなど過剰な免疫反応が起きる。

 グループは両細胞を比べ、制御性T細胞の方がIL2と結合する「受容体」が大きいことに着目。ごく微量のIL2投与で制御性T細胞だけを働かせることができれば、免疫反応を抑えられると想定した。

 松岡助教は「肺や肝臓などの移植後に起きる拒絶反応へ応用できる可能性もある。移植は通常の医療に近づきつつあり、幅広い患者のQOL(生活の質)向上に貢献したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年01月04日 更新)

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