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風邪に負けない(下) お年寄りは肺炎に注意 

米山浩英呼吸器内科部長

 せきは風邪の症状と思いがちだが、日本人の死因に多くお年寄りが気を付けるべき肺炎の場合もある。笠岡第一病院(笠岡市横島)の米山浩英・呼吸器内科部長は特に、細菌が食べ物や唾液と一緒に気管へ入ることで起きる誤嚥(ごえん)性肺炎への注意を呼びかける。

 厚生労働省の人口動態統計では、2010年に死亡した男女計約119万7千人のうち、死因が肺炎だったのは約11万9千人。悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患に続く第4位で、米山部長は「高齢になるほど肺炎で命を落とす人が増える」と説明する。

 このうち、誤嚥性肺炎は、体の嚥えん下げ機能と関係している。年齢を重ねると食べ物をかみ砕いたり飲み込む力は衰えるという。風邪をひくと、食道経由で胃に落ちる本来の動きが誤って気管に進んでしまう誤嚥を引き起こしやすくなるとされる。

 血の塊が詰まる梗塞や出血といった脳血管疾患は嚥下機能を低める要因であるだけに、患った経験を持つ人は一層の注意が必要だ。

 誤嚥して食べ物を吐き出そうと「むせる」ことと、せきは意味合いが違う。「むせているだけなのにせき止めを服用すると、吐き出そうとする仕組みが抑え込まれてしまい、誤嚥性肺炎を招く場合もある」と米山部長。

 それだけに、家族が「念のために」と受診させる場合は、お年寄りの様子を医師に丁寧に説明することが大事。たんや鼻水といった他の症状があれば、風邪などが疑われる。

 肺炎は従来、感染する場所に着目して2種類に分けられていた。普段の生活で、予防ワクチンがある肺炎球菌などにかかる「市中肺炎」と、病院内での「院内肺炎」がそうだ。

 最近は「医療介護関連肺炎」という新区分がある。(1)介護施設などに入所(2)病院を退院して90日以内(3)介護が必要(4)抗がん剤などの血管内治療を受けている―のどれかの環境で発症すれば含まれる。

 新区分の肺炎は、抗菌薬が効きにくく院内肺炎のもととなる耐性菌が関係している。「市中肺炎でも耐性菌が原因となっている」(米山部長)ことが登場の背景にあるだけに、入院していなくても、通院したり介護施設を利用するお年寄りは新区分を知識として知っておきたい。

 肺炎だけでなく、風邪やインフルエンザから健康を守るには、細菌やウイルスを体内に取り込まないことだ。米山部長が「基本のキ」と強調するのは、やはり手洗いとうがい。学校に通う孫からうつる場合もあるので、家族全体で取り組もう。

 まず手洗い。手のひらだけでなく、指と指の間▽親指の付け根▽手の甲―での洗い残しがないようにする。しっかり洗い流そうと思えば、30秒から1分近くの時間をかける。

 うがいは、市販薬を使う場合には記された濃度を守ることが大事。お茶でうがいしても、カテキン成分のおかげで効果がある。入れ立てでなくても「出がらしで十分」(米山部長)だそうだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年01月16日 更新)

タグ: 笠岡第一病院

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