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増える心臓病死亡 早期発見・治療を 対談(上) 岡山県医師会長 小谷秀成氏 岡山中央病院循環器センター長 岩崎孝一朗氏

 こたに・ひでなり 岡山大医学部卒。岡山市医師会長、岡山看護専門学校長などを経て、2000年4月から岡山県医師会長。岡山市に内科小児科医院を開業。73歳。

 いわさき・こういちろう 岡山大医学部卒。国立埼玉病院、心臓病センター榊原病院を経て、2005年7月、岡山中央病院循環器内科部長。06年1月から同病院循環器センター長。50歳。

 厚生労働省の人口動態統計(年間推計)によると、二〇〇四年の死亡者数の六割をがん、心臓病、脳血管疾患の三大疾病が占めている。中でも心臓病は十五万九千人と、がんに次ぐ死者数で、食生活の変化に伴う生活習慣病などの影響で増加しているのが現状だ。早期発見・治療が重要なキーワードとなる中、岡山県医師会の小谷秀成会長と岡山中央病院(岡山市伊島北町)の岩崎孝一朗循環器センター長に、心臓病の現状や最新治療について話し合ってもらった。(医療取材班)


生活習慣病改善が大切 小谷氏

専門センター立ち上げ 岩崎氏

 ―心臓病の現状や最新治療についてお聞きしたい。

 小谷 高齢化社会を迎え、心臓病患者は増加している。がんに次ぐ死亡者数で戦後の食生活の変化に伴う生活習慣病が発症につながるケースも多い。ただ「心臓病は人ごと」と思っている人も依然、多いと思われ、まず病気を正しく認識することが重要になっている。

 岩崎 心臓病を大きく分けると、虚血性心疾患、弁膜症、心筋症、不整脈などがある。このうち最も多いのが狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患。心臓を養う血管である冠動脈が動脈硬化で狭くなったり詰まったりして起こる病気で、胸の痛み、締め付けるような感じ、圧迫感を感じることが多い。狭心症は発作を起こすと十~三十分くらいで症状は消えるが、心筋梗塞は痛みは治まらず激しくなっていくのが特徴だ。

 ―なぜ心臓病は恐ろしいのか。

 岩崎 まず、急性心筋梗塞のうち、三分の二の人は狭心症などの前触れなしに起こる。次に、病院に着くまでに約半分の人は死亡する。入院したとしても一般的な内科治療では死亡率は10~20%もある。しかし、発作が起こって十二時間以内に詰まった血管を再開通させる治療を行えば、死亡率は5%前後と非常に低くなる。心臓病は早期発見・治療が重要なキーワードといえるだろう。

 ―全国でも心臓病患者は多い。岡山県の現状は。

 小谷 全国と同様に心臓病が原因で亡くなる人の割合は高い。二〇〇四年の死亡者一万七千四百八十九人に占める割合は、がん五千百六人、心臓病二千六百九十三人、脳血管疾患二千二百四十二人の順で、心臓病は全体の15・3%を占めている。一九五〇年には千百十二人だったことを考えると二倍以上に増えている。入院・外来における推計患者数(〇二年)も十二万六千三百人のうち六千人と、脳血管疾患(六千六百人)、がん(六千百人)に次ぐ。

 ―なぜ心臓病は増えるのか。

 小谷 国が豊かになり、生活環境が変化する中で、食事の欧米化や機械化が進むことによる運動不足などから起こる生活習慣病が増えているからだろう。生活習慣病は心臓病だけでなく、糖尿病や高血圧など複数の病気が互いに関連しており、どう改善していくかが予防のカギになる。

 ―岡山県医師会が考える予防策は。

 小谷 生活習慣病の予防が第一と考える。糖尿病に関しては、二〇〇四年度から県医師会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会、岡山県の四者で県糖尿病対策推進協議会を設置、講習会などを通じて啓発活動を行っている。喫煙についても歯科医師会や薬剤師会などと生活習慣病対策協議会を立ち上げて禁煙運動を盛り上げている。検診面では、各医療機関で行う老人基本検診に心電図検診を加えたり、児童生徒対象の検診の際には心電図を自動解析する機器を導入、異常の発見などにつなげている。

 ―治療・診断面について、岡山中央病院の体制は。

 岩崎 一月に心臓病を専門に治療する循環器センターを立ち上げた。中四国一のセンターを目指し、最新の設備で最高の医療を二十四時間提供することを目指している。診療体制の特徴として、従来の医師が個々に患者を診察する単独型診療ではなく、医師団によるチーム型医療を実施する。退院までの治療や検査、食事などを日程で示した診療計画(クリニカルパス)を用いた治療の基準化も進め、効率的な診療が行えるようにした。

 ―設備面ではどうか。

 岩崎 かつて狭心症の診断には、心電図などで心臓の筋肉に十分な血液が供給されているかで判断してきた。今ではカテーテルによる冠動脈造影検査が主流だが、われわれの循環器センターでは、最新のCT(コンピューター断層撮影装置)を導入した検査を取り入れている。64列CTといわれる機種で、コマ数が多く多面的に撮ることができ、心臓が立体的に表示される。血管が狭くなったり、詰まっている部分を視覚的に確認できる。


増える心臓病死亡 早期発見・治療を 対談(下) に続く
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月05日 更新)

タグ: 健康心臓・血管

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