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移植医療、岡山でも身近に・・・・費用は? ほとんどの臓器で保険適用 飛行機使うと500万円超も 障害者手帳、ほぼ負担ゼロ

岡山大病院で行われた脳死肺移植。一般的に移植医療で最も高額になるのは手術代だ=2011年6月(同病院提供)

4~6時間以内に血流再開が必要な「心臓」の搬送にはヘリコプターが使われるケースが多い=2011年2月5日、津山中央病院

 家族承諾で脳死臓器提供を認めた改正臓器移植法施行(2010年7月)で脳死ドナー(臓器提供者)が急増し、身近になりつつある「移植医療」。11年中は過去最多となる脳死ドナー44人の「無償の善意」により、計204人が移植を受けた。多くの患者が回復を遂げているが、移植医療には一体どのくらいの費用が必要なのか-。

 内科的、外科的治療などを尽くしても救命できない場合に行われる臓器移植は、「最後の手段」として語られることも多い。疾病に苦しみ、移植を望んでも「高額なのでは?」と心配する患者も多いだろう。

 費用は大きく分けて三つ。一つは、移植病院などに支払う手術代などの治療費。二つ目はケースに応じて、病院が民間業者や行政に立て替える臓器搬送費。そして、国内唯一の臓器斡旋あっせん機関「日本臓器移植ネットワーク」に支払う諸費用だ。

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手術代


 短期的にみると、最も高額なのが手術代。脳死移植は主に心臓、肺、肝臓、腎臓、膵すい臓、小腸で実施。移植ネットは「小腸を除き、ほとんどの脳死移植に健康保険が適用されている」と説明する。

 脳死移植はドナーがいる病院に移植病院のスタッフが出向き、臓器を摘出。移植病院に持ち帰って患者の体内に植える。このため、「摘出術」と「移植術」ごとに診療報酬(患者と健康保険が病院に支払う報酬)がある。

 移植ネットによると、診療報酬で最も高額なのが「肝臓」で、保険点数は摘出術8万5200点、移植術14万2380点の計22万7580点。1点当たり10円で計算するため、227万5800円となる。「心臓」の計204万3400円、「肺」の計178万4700円―と続く。

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搬送費


 臓器搬送にも費用がかかる。移植スタッフが摘出に向かう往路は列車やタクシーなどを使うことが多いが、一刻を争う復路の交通手段はさまざまだ。

 摘出から4~6時間以内に血流を再開しなければならない「心臓」の場合、消防ヘリコプターや民間の軽飛行機をチャーターすることが多い。「肺」も6~8時間が限度とされ、「新幹線や旅客機、軽飛行機などを利用して迅速に運ぶ」と、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)の大藤剛宏・肺移植チーフは説明する。

 ヘリコプターの近距離なら数万円で済む場合もあるが、軽飛行機で待機時間が長くなると、500万円を超えることもあるという。

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高額療養費制度


 患者はさらに、集中治療室や一般病棟での術後の管理治療費などを加えた額の1〜3割が請求され、原則として病院窓口で支払う。

 支払いには自己負担が一定金額を超えた場合に超過分が払い戻される「高額療養費制度」が適用される。その額は「年齢や所得などで異なる特殊な計算式ではじき出す」(厚生労働省保険課)。

 例えばサラリーマン(40歳、月収40万円)の患者が手術代や臓器搬送費などを含め、一カ月に100万円の医療費を請求された場合の窓口負担は30万円。制度が適用されると、その月の支払いは自己負担額上限の8万7430円で済む。医療費が300万円なら、10万7430円になる。

 だが、「移植患者は重症のため多くが障害者手帳を持っており、自己負担はほとんど必要ない」(移植ネット)という。生活保護を受ける患者も同様の措置が取られる。

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その他


 病院への支払い以外の代表的な支出は、移植ネットへの待機登録料だ。まず登録時に3万円、ドナー出現を待つ待機中の毎年3月に更新料5千円を支払う。希望がかない移植を受けた際は、斡旋料10万円を納入する。

 他人の臓器が体内に入る移植では、自分の身体がその臓器を攻撃する拒絶反応が起こる。これを制御するため、一生飲み続ける免疫抑制剤の薬代は必要。

 移植医療で劇的な回復を遂げ、就労や妊娠、子育てなど社会復帰を果たした人は少なくない。大藤チーフは「移植はもはや身近な医療。自己負担も高額にはならないので、移植医に相談してほしい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年01月17日 更新)

タグ: 岡山大学病院

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