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冷えを予防しよう(入浴編) ぬるめの湯で半身浴を

 前回(2011年12月19日付メディカ)に続いて冷え予防法を紹介する。今回は入浴編。岡山県南部健康づくりセンター(岡山市北区平田)の保健師後藤礼子さんに入浴の効果や留意点を聞いた。



 入浴の一般的な効果として、(1)温熱効果(2)静水圧(静止している水中で働く圧力)効果(3)浮力・粘性効果(4)リラックス効果(5)清潔感(6)1人の解放感―が挙げられる=図参照。

 末梢(まっしょう)の血管を広げ、温まった血液が全身をめぐる「温熱効果」が冷え予防に有効なのはもちろんだが、後藤さんは「ぬるめの温度で副交感神経が優位になる『リラックス効果』も冷え予防に関わってきます」と言う。

 自律神経には、主に昼間活動しているときに働く「交感神経」と主に夜間休むときに働く「副交感神経」があり、二つの神経のバランスで健康は維持されている。交感神経の働きが盛んになれば血管が収縮したり心臓の拍動が速まり、副交感神経が活発になると血管が拡張したり心臓の拍動がゆっくりになる。

 後藤さんは、副交感神経の働きが優位になる38〜40度のややぬるめの湯でリラックスしながら入浴することを勧める。血管が広がり身体の奥から温まるという。湯が熱すぎると、その刺激で交感神経が活発になり逆効果。湯の漬かり方は胸の下、みぞおち辺りまでの半身浴にする。水圧による心臓や肺へ負担が少なくて済む。湯船にショウブ、ドクダミ、ヨモギなどの薬草を入れてもよい。入浴時間は15〜20分が適当。

 風呂でしっかり温まっても、すぐに体が冷えてしまう冷え性の人に、後藤さんは「『温冷浴』で温かさを持続させてください」と助言する。熱めの湯(42度程度)に3分間、半身浴か腰湯で漬かり、湯船から出て、手や足に冷水(20度程度)を10秒間掛ける。これを5回程度繰り返す。温まって拡張した末梢の血管が冷水で収縮、体内の熱を閉じ込めた状態にできる。

 風邪気味で入浴できないとき、疲れがひどくて入浴したくないときなどは「足湯」がよい。40〜42度の少し熱めの湯に15〜20分程度、ふくらはぎから下を漬けると全身が温まってくる。本を読んだり音楽を聴きながら行うのもよい。

 入浴中の事故の救急搬送は「冬季」「70歳以上の高齢者」に多いという報告があり、入浴中の事故死は全国で年間約1万4千人と推定されている。「居間と脱衣所・浴室との温度差」「42度以上の高温の湯に入ったこと」などが事故の要因だ。後藤さんは「入浴は血圧を大きく変化させます。高血圧の人は要注意」と言い、安全な入浴法について次のように説明する。

 ▽入浴前=温度差を少なくするため、脱衣所を暖房する。浴室ではシャワーで湯をためたり、湯船のふたを開けるなどして湯気で室内を暖める。

 ▽入浴中=ぬるめのシャワーやかけ湯をしっかりと行う。身体を湯に慣らし、ゆっくりと湯船に入る。湯は38〜40度のぬるめがよい。長湯は避け、出るときはいきなり立ち上がらず、湯船に一度腰掛けるなどしてゆっくりと。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年01月16日 更新)

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