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増える心臓病死亡 早期発見・治療を 対談(下) 岡山県医師会長 小谷秀成氏 岡山中央病院循環器センター長 岩崎孝一朗氏

 いわさき・こういちろう 岡山大医学部卒。国立埼玉病院、心臓病センター榊原病院を経て、2005年7月、岡山中央病院循環器内科部長。06年1月から同病院循環器センター長。50歳。

 こたに・ひでなり 岡山大医学部卒。岡山市医師会長、岡山看護専門学校長などを経て、2000年4月から岡山県医師会長。岡山市に内科小児科医院を開業。73歳。

対談(上) から続く




検査体制の充実不可欠 小谷氏

高いレベルの医師育成 岩崎氏


 ―患者の負担も軽くなるのか。

 岩崎 従来機種では患者の息止め時間は二十秒、造影剤は百ミリグラム必要だった。新機種では息止め時間は十秒、造影剤は約半分ですむ。診断時間についても、画像が出来上がるまで一時間近くかかっていたものが、五分に短縮。気軽に検査してもらえると思う。CT画像で異常がなければ、冠動脈造影検査をしても99%の確率で異常はないため、不必要なカテーテル検査が防げ、痛みの軽減や医療費も抑えられる。

 ―CT検査に加え、珍しい取り組みもしていると聞いている。

 岩崎 数値で狭窄(きょうさく)度を測れる冠内圧測定を取り入れている。直径一ミリの針金を冠動脈に挿入し、先端に取り付けられた測定機で正常部分と狭窄個所の圧力を測定する。一番効果的なのは、血管の詰まりが50%の、造影検査では完全な診断が難しいケース。カテーテル治療が必要かどうか容易に判定でき、不必要な治療を避けることができる。

 ―県医師会として岡山中央病院の取り組みをどうみるか。

 小谷 心臓病を早期発見するには、検査体制の充実が不可欠だ。県内には循環器を専門とする診療機能の高い病院があるが、岡山中央病院に開設された循環器センターがその一角に入ってきたことは、住民にとってプラスになるし地域の医療機関にとってもありがたい。同センターは高齢化時代に増加する心臓病の診断治療管理に大きく寄与するだろう。

 ―スタッフが二十四時間体制でスタンバイしていることは、地域の患者にとっても心強い。

 小谷 岡山中央病院は〇一年に岡山県内で初めて地域医療支援病院に指定された。救急医療や専門性の高い医療の提供、地域医療従事者への院内開放・研修、地域の医療機関を支援するなど、多くの実績を挙げている。循環器センターを開設するに当たって、地域の診療所と連携したプログラムの提供や、不要な検査を避け効率のよい医療を提供するためのシステムづくり、最新設備を用いた高度な検査・治療の提供なども行っており、今後の取り組みに期待したい。

 ―心臓病は今後も増えていくと思われる。

 小谷 だからこそ県内の各病院の取り組みが大切になると思う。先ほども述べたように、中年以後の心臓病予防に関しては、不摂生な生活習慣や糖尿病などがキーワードになっている。最近はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が注目されている。それぞれは異常と診断される数値に至らなくても、内臓肥満や高血圧、高脂血症、血糖高値などいくつかの要因が複合し、動脈硬化や糖尿病を引き起こす。内臓にたまっている脂肪が原因とされ、四十代以上の日本人男性の五人に一人にみられる。病院は、地域の医師会や市町村などと一体となって教育プログラムを策定し、個人の生活習慣を踏まえた効果的な「保健指導」が必要だ。

 岩崎 保健指導をするにも人材が足りなくては成り立たない。われわれは診療と研究に教育を加えた取り組みを行うつもりだ。研究面では「よい臨床研究なくしてよい診療はない」との信念の下、論文発表を積極的に行うことで、高いレベルの医師を育てる。育った人材は地域で活動させ、住民の指導などに当てていきたい。

 ―今後の病院に必要なことは。

 小谷 生活習慣病予防にきちんと対応し、有効な指導ができる人材育成はもちろん大切。それに加えて、心臓発作に備えた二十四時間三百六十五日体制の確立、スタッフの充実と患者負担の少ない検査装置の整備、適切なリスク管理と安全な医療の提供なども挙げておきたい。“超”高齢化社会では病院の担う役割は一層重要性を増すだろう。

 岩崎 循環器センター開設を機に、もう一度原点に立ち返り、患者の満足、インフォームドコンセントの充実、連携の取れたチーム医療を充実させ、医療事故防止にも取り組んでいきたい。最新機器を備えるだけでなく、心身両面から質の高い医療を提供していく決意だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月05日 更新)

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