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足守救急ステーション開所1年 住民の安全・安心に貢献 到着 5分以上短縮 人員の配置で課題も

開所1年を迎えた足守救急ステーション

足守救急ステーション(地図)

 岡山市内で初の救急業務に特化した「足守救急ステーション」(東山内)が開所1年を迎えた。市が吉備中央町の消防事務を引き受けたのに合わせ、整備が遅れていた足守地区の救急体制を強化。救急車の現場到着時間が5分以上短縮するなど住民の安心・安全に役立っている半面、運用面で課題も浮かんできている。

 ステーションは昨年二月二十七日、足守地区の国道429号沿いに開設。同地区は火災の発生が年間三件(〇五年)と少ない。しかし、高齢化率は33・52%と市平均(18・78%)を大きく上回り、救急ニーズが高いため、高規格救急車一台を配備、運用に必要な署員三人を約八キロ離れた北消防署吉備中央出張所(吉備中央町竹部)から充てている。


市町またぎ活動

 同地区への救急車の出動は、これまで主に北消防署吉備津出張所(吉備津)が担当。通報から現場到着まで十五―三十分程度かかっていたが、ステーションの稼働によって平均約九分に大幅短縮された。

 ステーションの出動回数はこの一年間で三百七十五件に上り、約三分の二(二百四十九件)が足守地区。吉備中央出張所とも連携を取り、吉備中央町内への出動が百十八件と、市町をまたいだ活動を展開している。

 「以前と違い、救急車がすぐ来てくれるのは心強い」。ステーションがある福谷学区の連合町内会長熊城勇さん(70)=東山内=は喜ぶ。

 消防面での効果も。ステーションには消防装備はないが、昨年一件発生した火災では、署員が救急車で現場へ駆けつけ、消防団と連携して初期消火。市消防団北第四方面隊の楠本詔一隊長(64)=上高田=は「人命救助はもちろん、的確な指示は頼りになった」と話す。

 一方、足守地区を含む市北西部をカバーしていた吉備津出張所は、同地区への出動がほとんどなくなり、昨年の救急出動回数は前年より八十八件減少。「車両、隊員の負担が減り、他地区への迅速な対応がしやすくなった」と難波康廣北消防署長。同出張所の現場到着時間は平均一・六分短縮した。


市平均に及ばず

 一年を迎えたステーションだが「まだ手探り状態で、見直すべき点もある」と市消防局は言う。

 吉備中央出張所は二十二人体制。実際の消防・救急業務に当たるのは二交代勤務の一班七人で、この中からステーションに三人を配置するため、消防ポンプ車と高規格救急車各一台を備える出張所詰めは四人。最低でも各車三人が乗り込む必要があるため、同時出動できず「まずポンプ車を出し、ステーションからの救急車を待つなどせっかくの車両を生かし切れていない」(西山稔所長)のが現状だ。

 足守地区の救急車到着時間も改善されたとはいえ、市内平均(六・八分)には及ばない。心停止から三分、呼吸停止から十分で救命率は50%に低下するとされる救急業務。処置が遅れると、助かっても後遺症が残る確率が高まる。高齢者が多く、救急病院の少ない中で一層の迅速性は欠かせない。

 市消防局は新たに建部町の消防事務を引き受け、今年十月から業務を始める予定。管内の総面積は、旧市域の五一三・二八平方キロから一〇一六・八二平方キロに倍増する。

 救急ステーションは限られた財源の中での救急体制整備のひとつの形を示した。エリアが拡大する中、周辺地区の救急業務の充実をどう進めていくか。さらなる工夫が必要だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年03月05日 更新)

タグ: 医療・話題

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