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花粉症対策 専門医に聞く 川崎医大病院・原田教授

原田保教授

 くしゃみ、鼻水、目のかゆみといった症状に悩まされる花粉症。スギ花粉症の有病率(全国平均)は20%を超えるとされ、低年齢化も進んでいる。スギ花粉が飛散する季節を迎え、花粉症の診断・治療法、発症の仕組みや岡山県内の飛散予測量などについて、川崎医大病院(倉敷市松島)、同県矢掛町国民健康保険病院(同町矢掛)の専門医に聞いた。


診断・治療 対症療法は薬物中心 アレルギー性鼻炎で手術も


 花粉症の診察は、症状の内容や季節性があるかどうか問診。鼻汁を採取し、花粉症で鼻粘膜に増える白血球の一種、好酸球を検査したり、血液検査で花粉に対する特異IgE抗体の量を調べたりして診断を下す。

 治療は、対症療法と根治療法がある。対症療法は薬物療法が中心で、症状によって薬剤を使い分ける=表参照。軽症なら、第2世代抗ヒスタミン薬を服用する。以前の第1世代に比べ、眠気などの副作用が少ない。症状が重くなれば、鼻の中に噴霧するステロイド薬を併用する。鼻づまりの強い人は抗ロイコトリエン薬を内服し、目の症状がつらい人は点眼用抗ヒスタミン薬などを使う。

 「発症や花粉飛散の前から、初期療法として薬を服用すれば予防効果がある」と川崎医大の原田保教授(耳鼻咽喉科学)。一方、「アレルギー性鼻炎で鼻づまりがひどい場合は手術もある」と語る。

 鼻の入り口に近い下鼻かび甲介()こうかいの粘膜が腫れると、空気の通りが悪くなり鼻がつまる=図参照。下鼻甲介切除術は局所か全身麻酔後、レーザーなどで粘膜を切り取ったり、粘膜下の下鼻甲介骨をくり抜いたりし、鼻の通りを良くする。手術は約15分で済み、日帰り手術も可能。ただし「アレルギー自体の根治療法ではなく、粘膜は再生するため、鼻づまりが再発する可能性はある」という。

 鼻水が過剰に出る人には、後鼻神経切断術がある。局所か全身麻酔後、鼻から内視鏡を挿入。モニター画面で確認しながら粘膜を切り開き、レーザーで鼻水を分泌する後鼻神経を切る。手術は約1時間、入院は2、3日。

 花粉症の治癒が期待できる唯一の治療法が、特異的免疫療法(減感作療法)。花粉抗原を少しずつ体に投与していき、アレルギー反応を起こさない体質に変える。

 週1回通院で花粉エキスを薄めた液を皮下注射し、3カ月ほどかけて徐々に濃度を高めていく。各人で許容できる最高の濃度に達したら維持して、2〜3年注射を続ける。

 原田教授は「有効性は高く、子どもの8割以上、大人でも6、7割の患者に効果がある」と評価し「治療はアナフィラキシーショック(重度のアレルギー反応)を起こさないよう花粉症シーズンの3カ月以上前から始める必要がある。今年始めるなら飛散終了後の6月ごろからにし、来年の花粉飛散に備えたい」と説く。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年02月20日 更新)

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